2013 Fiscal Year Research-status Report
防波堤を越えた津波が引き起こす複合災害の危険度評価に関する研究
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24510247
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
米山 望 京都大学, 防災研究所, 准教授 (90371492)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牛島 省 京都大学, 学術情報メディアセンター, 教授 (70324655)
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Keywords | 津波 / 三次元数値解析 / 津波氾濫 / 漂流船舶 / 塩水被害 / 海洋インバースダム |
Research Abstract |
A.津波複合災害予測モデルの開発整備 (1)陸域での津波氾濫挙動を予測するためには三次元モデルによる解析が必要であることは認識されてきているが,近年の計算機の発達をもってしても全域で三次元解析を行うことは現実的ではない.そこで,津波波源を含む広域を平面二次元,沿岸から陸域を三次元で解析するハイブリッド津波解析手法を開発し,その妥当性を北海道南西沖地震津波を対象に確認した.(2)陸域で被害を拡大させる漂流船舶挙動を適切に予測するため,三次元漂流物挙動解析手法を開発した.係留船舶における係留索張力の実験結果と比較して,その妥当性を検証した. B.津波複合災害予測モデルの適用 (1)大阪市での津波挙動予測への適用:南海トラフ地震津波の大阪市における津波挙動に津波複合災害予測モデルを適用した.その結果,大阪市での津波被害状況が詳細に明らかになるとともに,建物の取り扱い方法(障害物とするか,粗度とするか)により,予測結果に大きな差が現れることを明らかにした.(2)海洋インバースダムによる津波減災効果の検討:変動の大きい自然エネルギーを一時貯蔵する施設として構想されている海洋インバースダムについて,津波に対する減災効果を検証するため,南海トラフ巨大地震の地震モデルを用いて,津波複合災害予測モデルを適用した解析を行った.その結果,ダムの配置によって,海岸の津波減災効果が大きく変動し,設置に当たっては十分な検討が必要なことがわかった.(3)河川遡上津波の淀川における塩分被害予測への適用:津波複合災害予測モデルを適用した結果,南海トラフ巨大地震が淀川を遡上した際,塩分が淀川大堰を越流し,大堰上流に位置する浄水施設の取水に影響を与えることがわかった.また,その被害の程度は,河川遡上時の河川流量や大堰ゲートの開閉状況の影響を大きく受けることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の成果(特に,ハイブリッド解析手法の開発)により,津波波源から陸域での津波氾濫挙動までを同時に解析できるようになり,本研究の主目的である「津波が引き起こす複合災害に関する検討」を行う基本的な準備は整った.さらには,漂流船舶の基本挙動の把握ができるようになり,より現実に近い災害予測が可能になった.また,開発したモデルにより,いくつかの災害現象について被害程度や,被害メカニズムを把握することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
A.津波複合災害予測モデルの開発整備 今年度開発したハイブリッド解析手法を多くの地点に適用しながら,二次元と三次元のインターフェイスにおけるデータ交換方法を確立し,二次元領域の内部に,三次元領域を柔軟に設定できるようにする.また,漂流船舶を複数同時に解析できるように改良する. B.津波複合災害予測モデルの適用 今年度実施した,大阪市における津波挙動,インバースダムの津波減災効果,淀川における塩分遡上に関する浄水場被害の検討を継続する.大阪市については,地下浸水被害まで検討する,インバースダムについては,海岸の津波被害を軽減するために有利な構造について検討する.また,浄水場被害については,淀川大堰上流側の塩分濃度が急上昇した場合の効率的な塩水排除方法について検討して災害時の水道水への影響の最小化につなげる. C.研究成果の発表 国内外の学会等に積極的に投稿し,研究成果の発表に努める.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最新の科学技術計算機を購入するに際して,必要なスペックを今年度中に確定することができなかったため,購入を見送った. また,海外発表で予定した学生の参加費が1名分不要になった. 本研究のモデルが今年度概成したため,必要なスペックを有する最新の科学技術計算機を購入する. また,複数の海外学会に参加し研究成果を発表する.
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