2012 Fiscal Year Research-status Report
希ガス同位体を用いた変動地形が明瞭でない活断層調査法の構築
Project/Area Number |
24510250
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
梅田 浩司 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 地層処分研究開発部門, 主任研究員 (60421616)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅森 浩一 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 地層処分研究開発部門, 研究員 (80421684)
末岡 茂 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 地層処分研究開発部門, 研究員 (80634005)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ヘリウム同位体 / 活断層調査法 |
Research Abstract |
本研究では,2011年東北地方太平洋沖地震で誘発された活断層を事例に,内陸地震の前後に断層から放出された揮発性物質の主成分や希ガス同位体組成の違いを世界で初めて明らかにする。また,地形・地質学的手法や地球物理学的手法等では発見が困難であった低活動性の断層や未成熟の断層等といった変動地形が明瞭でない活断層を認定するため,上記の知見を踏まえつつ,地下水中の溶存ガスの希ガス同位体組成を指標とした新たな活断層調査法を実用化することを目指している。 平成24年度は,2011年3月12日の長野県・新潟県境付近の地震 (M6.7),同4月11日の福島県浜通りの地震 (M7.0),同6月30日の長野県中部の地震(M5.4)に関連する十日町断層,湯ノ岳断層,井戸沢断層,牛伏寺断層等の周辺において,これまでヘリウム同位体比の報告がある坑井からの遊離ガスまたは地下水中の溶存ガスの採取を行い,主成分ガスおよびヘリウム,ネオンの同位体組成の測定を実施した。また,地下水中の酸素・水素同位体の測定も併せて実施した。 その結果,地震前後(断層活動の前後)に比べて十日町断層の周辺ではヘリウム同位体比はやや低下するのに対して,牛伏寺断層周辺では同位体比の上昇が認められた。湯ノ岳断層,井戸沢断層ではこれまでに測定されたヘリウム同位体比のデータが少ないものの,地震前後に大きな変化は認められなかった。ヘリウム同位体比が上昇する原因として,断層を通じたマントル起源ヘリウムの地下水への混入が,低下する原因として地殻浅所の岩石中の微小な割れ目の形成に伴う地殻起源ヘリウムの付加が考えられる。しかしながら,地震前後のヘリウム同位体比の変化は,概ね10%以下であり,ラドン,ヘリウム等の揮発性物質の非定常放出は小さいものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2011年東北地方太平洋沖地震以降に発生した3つの規模の大きい内陸地震について,地震を引き起こしたと考えられる断層周辺において地震前後のデータを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,横手盆地東縁,会津盆地西緑等といった3月11日以降に地震活動が活発化した地域について試料の採取・分析を行い,データの蓄積を図る。また,ヘリウム同位体比の時間・空間分野に加えて地球物理学的データ(地震波速度構造,比抵抗構造等)を考慮しつつ,断層周辺におけるマントル起源ヘリウムの輸送プロセスのモデル化を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品費:希ガス質量分析装置の維持に係る真空ポンプ,Ti-Zrゲッター用ヒーター等を購入する。 消耗品費:試料を採取するためのサンプリング容器等のほか,分析に係る実験器具等に充当する。 旅費:米国地球物理学連合等の国際会議に参加して,研究成果の発表や最新の学術的な動向に係る情報を収集する。
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