2012 Fiscal Year Research-status Report
爆発的噴火をもたらす浅部火道システムの構造発達過程
Project/Area Number |
24510251
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
下司 信夫 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 主任研究員 (70356955)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 噴火 / 火山 / 爆発 / 三宅島 / 国際情報交換 / イタリア |
Research Abstract |
三宅島における野外調査を実施し、山頂陥没カルデラ壁に露出する火道断面の高解像度画像を取得した。これまでの予備調査で取得した画像と合わせて、カルデラ壁の露頭の3次元構造を復元した。復元された3次元情報を使用し、火道の大きさや深さといった基本的なパラメータを決定した。陥没カルデラ壁で20以上の火道断面を認識・抽出した。これらについて、それに付属する噴出物の構造から噴火プロセスを復元するとともに、これらの火道を1)溶岩流出火道、2)スコリア丘構築火道、および3)大規模火砕噴火火道の3種類に分類し、それぞれの発達過程についてモデルを構築した。これらの区分は遷移的であり、噴火の爆発性が高くなるにつれて次第に1)の構造から3)の構造に推移することを示した。特に、火道内部におけるマグマの破砕深度を岩脈の構造から定量的に評価することに成功し、爆発性の高い噴火ではマグマは地表から150m以上深いところですでに破砕していることを示した。破砕深度は噴火の規模や爆発規模が大きくなるにつれて深くなることを示した。また、マグマの破砕が火道壁の侵食に大きく貢献していることも示した。 さらに、山麓部における野外調査の結果から、これらの噴火の年代や、噴火を駆動したマグマが基本的にほぼ同じ組成を持つことを明らかにした。 三宅島における成果を拡張し、ほかの火山との比較を行うために、エトナ火山においてイタリアの研究者との協力のもと、予察的な調査を行った。火山体崩壊壁や、比較的規模の大きな火口壁に複数の火道断面が露出することを確認し、そのうちのいくつかについては三宅島で行った手法を適応して火道断面構造の定量的な評価を行った。 これらの成果については、9月に開催された第四回陥没カルデラワークショップにおいて研究発表を行なうとともに、複数の論文として投稿をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
三宅島における陥没カルデラ壁の構造について、直径約2㎞の陥没カルデラ壁のほぼ全面の高分解能写真を取得し、その解析により陥没カルデラ壁に露出するほぼすべての火道断面を抽出することに成功した。また、それらの3次元構造の構築や火道の抽出とその解析についても順調に進めることができた。さらに、山腹部の調査と合わせて、これらの火道を形成した噴火のプロセスについても復元することに成功した。 また国際学会においてこれらの成果を発表することにより、国外の研究者との間での情報交換や共同研究を開始することができた。年度途中に、中期派遣制度により約3か月間イタリア共和国に滞在し研究を行ったため、国内の他の火山における野外調査を行うことができなかったが、イタリアのエトナ火山およびベスビオ火山において同様の手法による火道断面の解析を試みることができた。また、本研究テーマについて、イタリア等の研究者との共同研究を推進することができた。また、所属機関における研究業務である桜島の爆発的噴火の観測とも連携し、昭和火口における爆発的噴火の推移やそのメカニズムの解析についても本研究課題の知見を応用することができた。 以上の観点から、本研究課題はほぼ順調に推移していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の実施計画に従い、爆発的火道の構造の発達過程のモデルを検証する.噴火推移が明らかにされている最近の噴火によって形成された火道の構造解析を行う。対象としては、桜島昭和火口、エトナ山の複数の山頂火口、ストロンボリ島火口、ベスビオ火山山頂火口などを候補としている。平成25年度はイタリアに長期滞在予定のため、主にこれらのイタリアの火山において、現地研究者との共同により野外データを取得する。特に、エトナ火山において、侵食の進んだ火山体に露出する多数の火道断面が存在することが予備調査によって明らかにされているので、これらについて定量的なデータの取得を行う。また、最近の活動によって形成されている噴火口について、その噴火推移と地形変化のデータを共同研究機関から提供を受け、それらの解析を行うことによる、爆発的噴火の火道―火口形成過程についてモデル化を行う。 滞在機関のローマ第三大学において、野外調査における火道―火口形成過程についてのアナログ実験を行い、火道形成過程を支配する物理プロセスについてモデル化を行う。 これらの成果については、ヨーロッパ地球科学連合大会、国際火山学会等の国際学会で発表を行うほか、研究協力者との議論を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は長期間にわたりイタリア共和国に滞在予定であり、その間のエトナ火山などの野外調査費用(旅費および調査における消耗品等)が主要な使用目的となる。滞在機関であるローマからエトナ火山までの旅費および現地で使用・消耗する物品等に使用する。また、アナログ実験における消耗品(珪砂等のアナログ物質)についても支出予定である。また、ヨーロッパ地球科学連合大会、国際火山学会等の国際学会で発表のための旅費等に使用する。
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Research Products
(2 results)