2012 Fiscal Year Research-status Report
降水同位体観測による台風や豪雨をもたらす水蒸気の起源解析
Project/Area Number |
24510256
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
一柳 錦平 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (50371737)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 水安定同位体 / 水蒸気起源 / 台風 / 降水 |
Research Abstract |
台風や豪雨によって多量の水蒸気が日本にもたらされるが,その水蒸気がどの海域から蒸発したのか(起源)を明らかにするため,水の相変化によって変化する降水の安定同位体比を利用して,鉛直1層の同位体大循環モデルや水蒸気の起源解析モデルの結果を検証する. これまで研究代表者が熱帯アジア域で降水同位体観測を続けてきたインドネシア,パラオ,石垣島,熊本での観測を継続および更新した.2012年9月には石垣島,2013年2月にはパラオに観測出張して,降水サンプルおよび気象データの回収を行った.また,インドネシア海洋大陸における降水サンプルについても,約40地点の降水サンプルを入手できるように,インドネシア気象庁(BMKG)との共同研究を開始した.さらに,日本全域における降水同位体比の空間分布と季節変動を明らかにするため,全国約100地点に降水サンプリングを依頼し,2013年1年間の集中観測を行っている.これによって,世界で初めて日本の降水同位体比の時空間変動が明らかとなる. モデル研究としては,同位体循環モデルの計算機環境を整えるために,JRA40再解析データや全球同位体再解析データなどをダウンロードし,シミュレーションのためのハードディスクを整備した.全球同位体循環モデルは,1979年から2010年までの計算を終了した.その結果を検証するため,ベトナム,バングラディシュ,ジャカルタでの集中観測を対象として,降水安定同位体比の季節変動や日変動を明らかにし,モデルとの比較を行った.その結果,ベトナムとバングラディシュの降水同位体比は同位体循環モデルで再現できたが,ジャカルタはうまく再現できなかった.これは,低緯度の熱帯域ではモデルのグリッド内での局地循環により,対流性降水量の再現が難しいためと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
降水同位体観測はインドネシア,パラオ,石垣島,熊本,横浜で順調に降水サンプリングを継続している.また,同位体循環モデルも計算機環境を整備して,シミュレーションを開始した.ただし,当初計画にあったフィリピンは,予算を削減されたため,まだ観測を開始していない.その代わりに,同位体領域モデルの検証として,これまでの集中観測でサンプリングしたバングラディシュやジャカルタ周辺域での降水同位体比との比較を行った.その結果,低緯度熱帯域ではモデルのグリッド内での局地循環により,対流性降水が相対的に多くなり,その降水量の再現が難しく,そのために降水同位体比の再現も難しいことが明らかとなった. その他にも,インドネシア全域約40地点の降水サンプル取得のためにインドネシア気象庁と共同研究を開始した.また,日本全域での降水同位体比の空間分布と季節変動を明らかにするために,全国約100地点で降水サンプリングを依頼し,集中観測を開始した.このように,当初の計画以上に観測領域を拡大して研究している.
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度に降水同位体の酸素,水素安定同位体比の分析が終わっているベトナム,バングラディシュ,ジャカルタ周辺域を対象として,同位体循環モデルの結果と比較する.それによって,同位体比の変動要因や降水起源(どこで蒸発したか)などを明らかにし,モデルの検証を行う. 今後もインドネシア,パラオ,石垣島,熊本,横浜での降水同位体観測を継続し,可能であれば台風や豪雨の際の降水サンプルを直接観測する.さらに,降水の起源を区分して同位体局地循環モデルのシミュレーションを行い,降水同位体比の観測値との比較を行う.その結果から,これまでの台風や豪雨時における降水起源の変遷について定量的な解析を行い,熱帯域からどれだけの水蒸気フラックスが日本まで輸送されているかなどについて一般化し,メカニズムを明らかにする. さらに,日本全域約100か所での降水同位体の集中観測が2013年12月に終了するので,降水サンプルの分析を開始する.この集中観測によって,初めて日本全域の降水同位体比の空間分布や季節変動が明らかにすることができ,日本に被害を与える台風や豪雨についても詳細な解析が可能となる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
降水の酸素,水素安定同位体比を取得するためのサンプル瓶や,質量分析計による同位体分析の消耗品として,物品費50万円を予定している. 降水同位体観測のサンプルおよび気象データの取得のための出張費用として,パラオの外国旅費とデータ購入費用30万円,同様に石垣島への国内旅費20万円を予定している. 降水サンプルおよび気象データの観測,および質量分析計による分析補助作業として,謝金20万円を予定している. その他として,論文作成のための英文校正や投稿費用10万円を予定している.
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[Presentation] Diurnal cycle of stable isotopes in precipitation corresponding to the land-sea breeze over Jakarta, Indonesia.2013
Author(s)
Mahiro Tanoue, Kimpei Ichiyanagi, Jun Shimada, Syuichi Mori, Jun-Ichi Hamada, Miki Hattori, Peiming Wu, Manabu. D. Yamanaka, Fadli Syamsudin, Urip Haryoko
Organizer
International Geographical Union (IGU) Regional Conference in Kyoto
Place of Presentation
Kyoto International Conference Center
Year and Date
20130804-20130809
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