2012 Fiscal Year Research-status Report
富山湾沿岸における適応格子法を用いた津波遡上の高精度高速シミュレーションの実現
Project/Area Number |
24510260
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute of Technology, Toyama College |
Principal Investigator |
古山 彰一 富山高等専門学校, 電子情報工学科, 准教授 (90321421)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 適応格子 / 海岸工学 / 津波 / 防災 / GPGPU / 高速計算 / 富山湾 / シミュレーション |
Research Abstract |
研究実施計画による「開発フェーズ」を行った。計画では、「適応格子法の開発」、「波・遡上モデルの検討」、「高速計算」の3つを挙げていたが、これらの開発検討の進捗状況は以下の通りである。 「適応格子法の開発」についてはHirbert曲線を用いた手法の検討を行い、全格子を一筆書きでリンクするデータ格納方法を実装した。この手法を用いて富山湾沿岸における水位上昇における汀線移動のシミュレーションを実現した。この手法を用いることで、将来、並列分散環境で適応格子法を実装する際に、効果的な負荷分散が実現可能になると考えられる。 「波・遡上モデルの検討」については、通常格子での長波モデルを用いた場合の波の遡上範囲について、水槽実験や海岸工学分野で利用されている経験式と合わせながら精度検証を行った。通常格子における津波モデルを実際に富山湾沿岸領域に実装し、津波の陸上遡上のシミュレーションも検討した。しかしながら、精度検証の際に利用した水槽実験での波の形状や、センサー誤差などの処理が十分に行えず、モデルの精度検証については今後の検討課題となる。 「高速計算」については、適応格子を用いない通常の構造型格子で、津波の遡上シミュレーションの高速化を試みた。富山湾沿岸域において5メートル間隔の地形データを実際に用いて、全300万点以上の計算サイズにGPGPUを利用した高速計算を行った。各格子点での処理をスレットとして定義し、GPUの高い並列性能を利用し高速計算を試みた。この検討の中で、実時間で5分のシミュレーションを約1分半で計算することが可能となった。これはCPUを用いた場合の約78倍の計算速度に相当し、GPGPUを用いた高速計算の優位性を示すことができた。また、今回導入したNVIDIAのTESLA、K-20を用いることでC2075と比較して、1.7~2倍近い高速性能が得られることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度の研究計画である「開発」フェーズについては、概ね計画通りに進展している。適応格子法の開発部分については、目標として掲げていたHash Tableを用いる部分が実装されていないが、これは24年度後半に大幅にアーキテクチャが変更されたGPGPUが発売され、そのアーキテクチャに合うものを検討する必要があったためである。そこで、計画では25年度に計画していた富山湾沿岸の実地形を導入した非適応格子法での津波遡上シミュレーションの実装を24年度内に検討した。津波・遡上モデルの検討については、水槽実験を行い、モデル精度の検証を試みたが、水槽実験でのデータ取得、処理等に関して課題が多く、これは25年度内の一つの課題となる。高速計算については、25年度に予定していた非適応格子を用いた富山湾沿岸での津波の遡上シミュレーション高速化を24年度内に行う事が出来た。 項目ごとにはまだ検討中の課題もあるが、25年度に計画していた部分を前倒しして実現した部分も有り、全体的にはおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度の研究計画は、「応用」フェーズとなり、「実地形への応用」「地勢データ挿入」「津波発生モデル検討」となる。「実地形の応用」については、既に非適応格子法については富山湾沿岸域の地形を導入したシミュレーションを行っており、これを適応格子法に実装することを試みる。モデルの高精度化や津波のモデルについては、オーストラリアクイーンズランド大学のシャンソン教授と議論を行う事で更なる精度向上を試みる。「地勢データの挿入」については、陸上での土地利用状況の現地調査を行いながら、それを数値モデルに組み込むことを検討し、より高精度な津波遡上エリアの予測を目指す。「津波発生モデルの検討」については、引き続き、富山大学の松浦教授、竹内教授から富山湾内の断層の状況や、海底地形の効果が波に及ぼす影響などを議論しながら、特に海域部での精度向上を目指す。 また24年度中に計画していたHash Tableを用いた適応格子法の検討、適応格子法に関するGPGPU上での高速計算の実現、水槽実験データを用いたモデルの精度検証については引き続き検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費として、津波モデルの共有を行うためのWebサーバ、バックアップハードディスクのために\200,000使用予定である。 旅費については、国内学会を1件(東京)、国際会議を3件(英国2回とチュニジア)予定している。また研究打ち合わせのため、オーストラリアクイーンズランド大学とニューサウスウェールズ大学訪問を検討している。旅費合計が、\1,100,000となる。 人件費・謝金については、富山湾沿岸域の地勢データ取得のためのスマホアプリ開発、データ収集にかかわる人件費として\100,000を使用予定である。 なお、24年度において次年度使用額が発生しているが、その中で年度末のスリランカにおける学会参加の支払いが4月以降であったため、年度内決済に反映されていないものがある。また25年度内における国際学会発表回数が当初の計画より増えるため、24年度分を25年度に使用することとした。
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