2012 Fiscal Year Research-status Report
津波発生時における適切な船舶退避の方法及び乗員の非常呼集計画に関する研究
Project/Area Number |
24510265
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Japan Coast Guard Academy (Center for Research in International Marine Policy) |
Principal Investigator |
松浦 義則 海上保安大学校(国際海洋政策研究センター), その他部局等, 教授 (80285436)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩永 佐織 海上保安大学校(国際海洋政策研究センター), その他部局等, 教授 (00559239)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 減災 / システム工学 / エージェント / 海上安全 / 津波 |
Research Abstract |
研究の目標を達成するため、東日本大震災の時に発生した大規模津波が東北地方沿岸に到達した時刻のおよそ前後1時間の船舶の状況について、第2管区海上保安本部より入手した船舶の状況を示す船舶AIS(Automatic Identification System)データを用いて解析を行った。このときの船舶の行動資料を基にして、大規模津波の発生時に、積み荷の状況や船舶の大きさなど複数の条件ごとに船舶がとる行動指針をまとめることが、重要な課題であることを以下の論文にて発表した。 Saori IWANAGA, Yoshiori MATSUURA, "Safety of ships’ evacuation from tsunami: survey unit of the Great East Japan earthquake",Springer, Artificial Life and Robotics, pp.168--pp.171, 2012(17) さらに、船舶を操縦する要員を船舶に非常呼集する場合において、一般の避難者との関係を調査するため、陸上部分での避難者の行動をシミュレーションするプログラムをマルチエージェントの手法により作成した。このプログラムは東日本大震災を機に注目されている避難者の心理学のうち、正常性バイアスと同調行動を取り入れており、研究会にて「呉市における津波発生時の住民避難」というタイトルで発表している。この発表論文は加筆修正した後、平成25年度の本校の紀要として刊行する予定であり、船舶乗組員の呼集計画のシミュレーションの一部にする予定である。船舶乗組員の呼集に応じる行動と住民の避難行動は相反する行動であり、研究の一部分として発表できた意義は大きい。また、このプログラム手法を用いて、船舶退避のプログラムが一部完成し、現在実験中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目標について、調査分析の手法およびその必要性を国際会議で発表し、論文誌に掲載できた。 津波から避難する船舶のマルチエージェントシミュレーションを用いたプログラムについては、仙台塩竈港をモデルとし、東日本大震災時に発生した津波から退避する船舶のAISデータを基にして、大型船舶と小型船舶の種別で仙台港外に退避するプログラムを作成できた。本プログラムには大型船と小型船の行動の特徴を取り入れるなどの工夫をして、津波発生時の船舶の行動を可能な限り再現できるようにしている。しかしながら、1隻毎の船舶の行動解析がまだ進行中であり、平成24年度に予定した紀要等での研究成果の先行発表を行うには至っていないが、平成25年度の本校紀要に掲載するための準備は既に整っている。 平成25年度以降に開発する予定である陸上部分のシミュレーションプログラムの一部が先行して開発できており、その内容はマルチエージェントシミュレーションに特化した研究会にて発表をしている。そのため海岸や港湾から避難所に移動する住人や旅行者等の災害心理学を取り入れたシミュレーションが可能であり、船舶乗組員の非常呼集部分を今後開発し、シミュレーションをすることが現実味を帯びてきている。
|
Strategy for Future Research Activity |
船舶の種別をその大きさ(避難速度や操縦の難しさの指標)と積み荷(危険物を積載してるか否かの指標)の条件により分類し、シミュレーションを実施して避難に要する時間のデータを集積する。また、そのデータを実際の東日本大震災で発生した津波から避難する船舶のAISデータと1隻ごとに詳しく分析し、シミュレーションプログラムの各種パラメータを求めることにより、シミュレーションプログラムを完成形に近づける作業を実施する。 海岸や港湾から避難所に移動する住人のシミュレーションはすでに可能であるので、今後は船舶乗組員の非常呼集部分を開発する。すなわち、非常呼集した乗組員が乗船する船舶に到着した後に船舶の避難が開始される部分である。乗組員を非常呼集した場合としない場合での船舶避難のシミュレーションを実施し、地震発生直後から津波到達までの予測時間と乗組員の現在地から港湾までに要する時間を比較する。本シミュレーションは東日本大震災時の船舶AISデータが存在する港湾で実施しているが、他の港湾都市でも応用可能かどうか検証用プロトタイプ作成を追加する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主にシミュレーションの対象とする港湾での現地調査のための旅費と国際会議での発表および国内外の学会、講演会等における情報収集のために使用する。 現地調査には、東日本大震災のデータを取得した仙台塩竈港と八戸港に赴き、震災時のAISデータが示したものと現地の状況を照らし合わせる予定である。また、南海トラフ地震が発生した際に大きな被害が予想されている高知港とその周辺の状況を調査し、現地保安官署へ聞き取り調査を行い、本研究の南海トラフ地震で発生する津波への応用を考察する。 国際会議は平成25年11月にシンガポールで開催されるワークショップ Towards Large Multiscale Simulations of Complex Socio-Economic Systems with Heterogeneous Interacting Agentsと平成26年1月に別府市で開催される国際シンポジウム Artificial Life and Robotics で発表することを最初の目標とし、参加のための旅費、参加費に充てる予定である。また、論文誌「Artificial Life and Robotics」へ投稿する予定であり、論文掲載料および別刷り費用に充てる予定である。 前年度に購入した計算機及びプリンターの消耗品については適切な量を補充する予定である。新しく購入する備品はマルチエージェントシミュレーションプログラムの開発環境の拡張を実施するため、追加USBキーを購入する。また、人間の行動範囲について多角的な面から検討するための専門図書の購入を予定している。
|
Research Products
(3 results)