2013 Fiscal Year Research-status Report
津波発生時における適切な船舶退避の方法及び乗員の非常呼集計画に関する研究
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24510265
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Research Institution | Japan Coast Guard Academy (Center for Research in International Marine Policy) |
Principal Investigator |
松浦 義則 海上保安大学校(国際海洋政策研究センター), その他部局等, 教授 (80285436)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩永 佐織 海上保安大学校(国際海洋政策研究センター), その他部局等, 教授 (00559239)
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Keywords | 減災 / システム工学 / エージェント / 海上安全 / 津波 / 避難 / シミュレーション |
Research Abstract |
マルチエージェントシミュレータを用いて、東日本大震災時の仙台塩竈港の船舶の行動を再現するプログラムを開発し、そのシミュレーション結果と第2管区海上保安本部より入手した震災当時の船舶の状況を示す船舶AIS(Automatic Identification System)データとの比較を行った。この結果、ほぼ震災時と同様の船舶行動を再現できていることが分かった。この成果は、避難船舶の速度や出港順序等の入力パラメータを変更してシミュレーションを行うことで、船舶の効率の良い避難行動の研究に利用可能であり,その意義は小さくない。 また、船舶乗組員と避難住民の行動をシミュレーションするために、前年度に開発した呉市における住民の避難のプログラムを応用して、仙台塩竈港の住民の避難行動を再現するシミュレーションプログラムを設計し、そのプロトタイプを開発した。船舶乗組員が津波の被害に遭う可能性が高い港湾地区に呼集されるシミュレーションは、私たちの知る範囲で過去に例がなく、船舶による被害を防ぐ目的で非常に重要と考えている。 本年度の研究成果は国際ワークショップで発表した。また、前年度に口頭発表した住民避難のシミュレーションの研究成果を論文として本学の研究報告に掲載した。さらに、船舶退避の援助を行う目的で、津波による漂流物を認識するために有効と思われるRFID(Radio Frequency Identifier)の活用方法を国際会議で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に開発した津波から退避する船舶のマルチエージェントシミュレーションプログラムをさらに発展させ、シミュレーション結果と東日本大震災時の実際の船舶退避データとの比較が可能になった。さらに、制御を失った船舶自身が被害をさらに拡大する凶器となる可能性が高い危険物搭載船のように、必ず港外退避をした方が良い船舶を定義し、今後の船舶退避の指針作成を検討できる状態になりつつある。また船舶を港外退避させるために、港に船舶乗組員が集合する必要があるが、前年度に開発した呉市の住民避難プログラムを応用し、仙台塩竈港の近郊の陸上部分を住民や船舶乗組員が行動する空間と位置づけて、住民が避難行動をとるシミュレーションプログラムを設計した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は次のように研究を推進し、津波が予想される際に、船舶の退避行動を含めた取るべき行動の指針を提案する。 1.仙台塩竈港を例として、地震発生時における住民と船舶乗組員の行動をシミュレーションするプログラムを開発する。 2.その後、当該船舶を運航可能な船舶乗組員の人数を呼集できた船舶からその退避行動を開始するように、前年度までのシミュレーションプログラムと合成して、船舶の避難時間と船舶乗組員の行動をシミュレーションし分析する。その際に、津波到達までの余裕時間や、避難経路の混雑具合との関係に注目して分析を進め、大規模地震が発生した時に船舶乗組員が取るべき行動の指針を提案する予定である。 3.さらに、住民の避難行動と船舶乗組員の経路が重なり混雑が起きた場合の船舶乗組員の行動を分析し、住民の避難経路計画が船舶の退避行動に与える影響を考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度はほぼ計画どおりに助成金を使用したが、初年度に購入したシミュレーション用の高性能計算機が比較的安価に購入できたことにより、およそ10万円の次年度使用額が生じた。 最終年度は、交付予定額と次年度使用額の約10万円の合計80万円を次のとおり使用する計画である。 1. 研究成果を国際会議及び国内の学会で発表するための旅費として使用する。 2. 次の発展研究のために、これまでの研究成果をまとめ印刷する。
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Research Products
(4 results)