2014 Fiscal Year Research-status Report
イントロン長分布の多角的解析によるヒト・スプライシング機構の進化的解明
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24510271
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
嶋田 誠 藤田保健衛生大学, 総合医科学研究所, 講師 (00528044)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | イントロン / データーベース / 進化 / スプライシング |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はヒトの全イントロンのうち65塩基長以下を微小イントロンと定義し、その探索方法や特徴を論文にまとめた。これまで、微小イントロンの起源を論ずる際、利用可能なヒト近縁種の転写物配列の数や信頼性を評価しなかったため、客観性に欠けるという課題があった。 今回は、ゲノム情報と転写物情報とに分けて、保存性を解析し直すことによって、微小イントロンの系統発生の時期を再検討した。近縁種における転写物情報については、配列類似性だけでなくortholog注釈情報を評価しつつ利用した。 その結果、orthlog転写物情報は22微小イントロンのうち15イントロンで見つかり、そのうち7イントロンでイントロンの保存性を確認した。それらの内訳は、真主齧上目の共通祖先まで保存性をさかのぼれたのは3イントロンであり、真主齧上目とローレシア獣上目の共通祖先の場合が4イントロンであった。ただし、転写物情報だけでは不充分であり、ゲノム配列におけるスプライス2塩基(GT-AG)サイトの保存状況を手掛かりに推定せざるを得ない場合が多くあることが分かった。そこで、ゲノム配列での保存性を確認したところ、スプライス2塩基保存性がヒトにのみあることが確認されたのは一つのイントロンであった。微小イントロン中最長の65塩基長の6イントロンは全て哺乳類以前から出現していたのに対し、それより短いイントロンでは霊長類の共通祖先以前までさかのぼれるのは1イントロンしかなかった。また、実験的裏付けの有るイントロンは古い起源をもつ傾向が認められた。 これらのことは、ヒトに至る進化過程で選択的スプライシングの多様化が遺伝子産物の多様化をもたらすなかで、微小イントロンを産するスプライシング機構が比較的最近になって多用されていることを示唆していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度までの状況判断に基づき、広い分類群の間で比較する計画を改め、ヒトおよびヒトの近縁種のイントロンを中心に解析を行っている。 そのため、きめの細かい解析をすることができ、具体的な結論を得られるようになった。得られた解析結果の発表に向け、さらなる推敲が望まれる。 微小イントロンの存在報告とその確からしさについてまとめた論文の受理に至ったが、時間がかかり過ぎたことは反省事項である。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の論文で明らかになったように、Splicing Scoreが低いにも関わらず近縁種で保存されている、イントロンが65塩基長より長いイントロンにも存在する可能性は高い。そのため微小イントロン以外の長さのイントロンにおいて、同様の基準でSplicing Scoreが低いにも関わらず保存されているイントロンを大規模に抽出し、クラスター分けを行いたい。 また、これまで行った多変量解析によって、イントロン長とその他の特性についてのお互いの関係を示す試みを、イントロン長に関わらず大規模に行うことにより、より明確な関係性を抽出する。それにより、ヒトのイントロンは複数のスプライシング機構により除かれていることを示していきたい。
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