2012 Fiscal Year Research-status Report
急性骨髄性白血病の増殖制御に関わる新規非コードRNAの機能の解明
Project/Area Number |
24510277
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
平野 哲男 広島大学, 総合科学研究科, 助教 (50228805)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 疾患関連遺伝子 / 染色体外因子 |
Research Abstract |
転写物、ヒストン修飾地図に関する公開されているデータベースと照合し、CCDC26遺伝子領域において白血病細胞内で活発に転写されている領域を同定した。これには、CCDC26遺伝子自体以外にイントロン領域2箇所とCCDC26遺伝子の上流に隣接した遺伝子間領域が該当した。また、われわれ独自の調査から、それらは7種類の急性白血病細胞株、1種類の急性単球性白血病細胞株、4種類の慢性骨髄性白血病株で活発に転写されており、また、多くの骨髄性白血病患者由来の骨髄細胞で程度の差はあれ、発現していた。一方、リンパ性白血病やリンパ腫由来の培養細胞では全く発現していないことがわかった。従って、CCDC26遺伝子領域からの転写は骨髄系細胞に限局した制御を受けており、一定の機能を持つことが示唆された。ノーザンブロッティングの結果、これらの転写物のひとつは全長が10キロ塩基長以上にわたっている事がわかった。転写産物が通常のmRNAより長いことは、機能性、非コード性RNAのひとつの特徴であり、転写物の配列からは100アミノ酸以上のタンパク質がコードされない事も含め、この遺伝子座からの転写産物が機能性RNAであることを支持する結果の一つである。 ヒトとマウスとのシンテニー比較および局所的なホモロジーの解析の結果、CCDC26遺伝子のマウスホモロジーと考えられる遺伝子座を同定した。この領域はマウスだけでなく、イヌ、ウマ、ウシなどの他の哺乳動物においても保存されていた。マウス白血病細胞株における転写を調べた結果、ヒト白血病細胞と同様骨髄性白血病細胞にのみ発現が見られ、リンパ性白血病やマクロファージ由来の細胞株では発現していなかった。正常組織における発現では、骨髄、胸腺で発現しており、また予想外な事にことに精巣で非常に強い発現が見られた。このことはCCDC26マウス相当遺伝子の新たな機能を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度研究実施計画に基づいて、骨髄性白血病細胞におけるCCDC26遺伝子座からの転写物を同定する目標はおおむね達成され、これまで報告されていなかった転写物を新たに同定した。転写物に関する公開データベースの発達が著しく、これに大いに助けられ予想以上の速度で研究が進展したと言える。また、各白血病細胞株における転写物の活性調査は、共同研究者の原田浩徳博士の協力により、迅速に結論を得ることができた。一方でRACE法による転写物の全長のクローニングは進んでいない。その理由は、ノーザンブロッティングで明らかになった転写物全長の異常な大きさにあると思われる。従って、今後は全長の解明について、RNAプロテクション法などに切り換え、研究を進めることにしたい。また、全長の解明に手間取り、in situ hybridizationによる転写物の細胞内局在の調査は進んでいないが、方法自体は確立しており、早急に進めたい。 また、マウスのCCDC26相当転写産物を新しく同定できた事は大きな成果であり、ヒトCCDC26遺伝子と共にこの転写産物の解析を進めてゆきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
CCDC26遺伝子座由来転写物の全長の解明について、RACE法からRNAプロテクション法などに切り換え、研究を進めることにしたい。また、全長の解明に手間取り、in situ hybridizationによる転写物の細胞内局在の調査は進んでいないが、方法自体は確立しており、早急に進めたい。また、本年度以降の計画としては、①ノックダウン法によるCCDC26遺伝子座転写物の機能的解析、②転写物と相互作用するタンパク質の構造的解析に大きく分けられるが、①を主軸をおき、転写物の生物学的、生理的意義について明らかにしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
新規の装置などは計上しておらず、細胞培養、抗体、遺伝子工学関連等の消耗品のみである。
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