2013 Fiscal Year Research-status Report
有糸分裂阻害天然物ニグリカノシド類とその多様な人工類縁体の合成研究
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24510289
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤原 憲秀 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20222268)
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Keywords | 有糸分裂阻害剤 / ニグリカノシド / 人工類縁体 / 有機合成化学 / グリセロ糖脂質 |
Research Abstract |
緑藻由来のガラクトシルグリセロ脂質のニグリカノシド類は、強力な有糸分裂阻害活性と新規で特異なエーテルクロスリンク構造を持つため、薬剤耐性を克服しうる新たな抗癌剤のリードとして強く期待される。一方、これらは緑藻からの産生量が低く物質供給に難があり、立体化学も未解明のため、詳細な生物活性の研究が停滞している。申請者は、独自に立体選択的な鎖状エーテル構築法を開発しているため、これを適用した上記の「供給と立体化学」の課題の解決を企図した。具体的に次の4点を目的としている。(1)合成化学的にニグリカノシド類の絶対配置を決定する。(2)同時に、天然型立体配置のニグリカノシド類の全合成を行う。(3)さらに、その合成法を最適化し、物質供給に適した効率的全合成経路を確立する。(4)ニグリカノシド類の立体異性体および糖部の変換体を合成してライブラリーを構築し、有糸分裂阻害・癌細胞成長抑制活性における構造活性相関の究明に役立てる。 平成25年度は、前年度に引き続きニグリカノシドAジメチルエステルを対象として、合成化学的な絶対配置の決定を検討した[目的(1)(2)]。まず、ガラクトース部とC8'位およびC2'''位について、その相対立体関係を確定させた。D-ガラクトース・2'''R・8'R配置、D-ガラクトース・2'''R・8'S配置、D-ガラクトース・2'''S・8'R配置、D-ガラクトース・2'''S・8'S配置の部分構造の合成を完了し、天然物とNMRスペクトルを比較して、天然物の該当部分の立体化学を決定した。また、ライブラリーの一部として、これら部分構造の生物活性を予備調査した[目的(4)]。さらに、C10-O-C11'のエーテルクロスリンク部の構築法として前年度に見出したアルドール反応に再現性の問題が生じたため、新たにIreland-Claisen転位による該当部分の構築を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、ガラクトース部とC20脂肪酸鎖部のエーテル連結部分(C8')の相対立体化学と、グリセロール部のC2'''位の立体化学の確認のため残るジアステレオマーの合成を行い、天然物との比較により、天然物のガラクトース部とC8'およびC2'''の相対関係を確定させた。また、4つの簡略化人工類縁体がライブラリーの一部として得られ、その生物活性の予備試験を共同研究により行った。類縁体の活性試験については概ね順調である。 また、C20脂肪酸鎖とC16脂肪酸鎖のエーテル結合部分の構築法について、前年度にEvans不斉アルキル化の変法の利用を考案したが、今年度に入り反応条件により異なる立体選択性が得られることが判明し、その確認作業に時間を要した。結局、Evans不斉アルキル化法では再現性に難があることが判ったため、Ireland-Claisen転位を利用する新たな合成法を検討することとなり、この部分の構築法の開拓は後退している。当初は、全合成と絶対配置決定は25年度までの達成計画であったため、合成についてはやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、引き続きニグリカノシドAジメチルエステルの全合成と絶対配置決定を検討する。その達成後、最初の全合成で検討した合成経路をもとに、その合成で低収率となった反応段階、および段階数が多く非効率な部分合成プロセスを見直し、合成経路の最適化を図り、天然型絶対立体配置の短段階効率的合成経路の確立を行う。これにより、少ない労力で多量のニグリカノシドAジメチルエステルを得て、生物活性試験に供することが可能となる。また、研究途上で生じるニグリカノシド類の立体異性体やモデル化合物を利用して、および糖部や脂肪酸鎖を人工的に改変した類縁体を多数合成して、化合物ライブラリーを拡大する。そして、そのライブラリーを用いて適切な共同研究者とともに有糸分裂阻害・癌細胞成長抑制活性における構造的・立体化学的要因を探索し、活性発現最小構造単位を究明に繋げたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の経費の節減の結果、少額の使用残が生じた。 使用残については、少額なため次年度の消耗品費と合わせて試薬(消耗品)の購入に使用する。
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