2013 Fiscal Year Research-status Report
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24510291
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
此木 敬一 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40292825)
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Keywords | オカダ酸 / 下痢性貝毒 / 二枚貝 / 自己耐性機構 |
Research Abstract |
[目的]下痢性貝毒は渦鞭毛藻類というプランクトンが生産する有毒の二次代謝産物を主要原因毒とする動物性食中毒の一種であり、日本沿岸域の養殖業を脅かす生命現象である。主要原因毒であるオカダ酸やディノフィシストキシン1は、Prorocentrum属、Dinophysis属の渦鞭毛藻により生産される事が判明している。また、このプランクトンが大量発生した海域では、ホタテ貝やムール貝などの二枚貝中に蓄積されたオカダ酸やディノフィシストキシン1の大部分が構造変換を起こし、脂肪酸の縮合した誘導体となる。この誘導体はオカダ酸やディノフィシストキシン1の標的分子であるプロテインフォスファターゼと呼ばれるタンパク質には結合しない。研究代表者はこの変換反応こそが二枚貝が備える自己耐性機構であり、構造改変の機構解明を行い、将来的に下痢性貝毒を蓄積しない二枚貝の創成を目指している。本研究ではオカダ酸をホタテ貝抽出物と反応させることで生成すると予想される誘導体を質量分析計で検出し、下痢性貝毒変換酵素の単離・構造決定を行うことを目的とする。 [昨年度までに得られていた結果]当該酵素が膜タンパク質であることが推定された。この場合、当該酵素精製のため、界面活性剤による可溶化が必要となる。しかし、界面活性剤は質量分析計において感度の低下を引き起こす事が知られるため、当該酵素を検出する新たな分析法の開発が求められた。 [今年度に得られた成果]分子内に共役ジエン部位を持つ化合物がDMEQ-TADと呼ばれる蛍光性のジエノフィルと付加体を形成し、蛍光標識されることはビタミンD3の研究で明らかとなっていた。研究代表者はこの研究を参照し、分子末端にジエン部位を有する脂肪酸のコエンザイムAエステルを合成した。また、この化合物とオカダ酸をホタテ貝の抽出物に添加すると縮合反応が進行する事を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
交付申請書においては、平成25年度、当該酵素の単離を終えてその一次構造の解析を行う予定であった。しかし、「研究実績の概要」で報告したように、当該酵素が膜タンパク質であったことより、当該酵素を検出するための手段として質量分析法に替わる新たな手法の開発が必要となった。平成25年度は、新たな手法の開発に時間を費やしたため、当初の予定から遅れることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」で報告したように、DMEQ-TADによる付加反応を利用し、界面活性剤が共存する条件で当該酵素の探索が可能になった。今後は、本手法を用いて、当該酵素の探索を行って行きたいと考えている。そのため、本年度、タンパク質を分画・分離するためのクロマトグラフィー装置の購入を計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
下痢性貝毒の原因物質が二枚貝の中腸腺という組織の中で脂肪酸により修飾される。本研究ではこの変換反応を触媒する酵素の探索を行っている。しかし、当初の予定とは異なり、本酵素が膜タンパク質である事が判明し、質量分析の結果を指標とする分離・精製が困難となった。そのため、本酵素の活性を簡便に調べる事ができる試験方法の確立が急務の課題となり、研究を進めた結果、配分額通りの支出が困難となった。 蛍光色素を用いる新たな手法により、目的の酵素の活性測定が可能となり、本格的な酵素の探索を進める準備が整った。次年度、酵素精製のための試薬やクロマトグラフィー装置の調達、研究成果発表のための必要経費に充てる予定である。
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Research Products
(4 results)