2012 Fiscal Year Research-status Report
リピート配列を持つDNA結合ドメインのDNA結合様式解明と人工蛋白質創製への展開
Project/Area Number |
24510295
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
今西 未来 京都大学, 化学研究所, 助教 (80362391)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 転写因子 / DNA結合蛋白質 |
Research Abstract |
任意のDNA配列に結合できる人工DNA結合タンパク質は、転写制御やゲノム編集のためのツールとして有用である。植物病原菌由来の転写因子様タンパク質は、DNA1塩基を認識するユニットの繰り返し配列を持ち、ユニットのシャッフルにより、様々なDNA配列に結合できることが近年明らかになってきた。一方、その物性や結合の詳細は不明であり、これらを明らかにすることが、人工タンパク質のデザインにとって重要であると考えられる。そこで、本研究では、この転写因子様タンパク質のDNA結合特性の詳細を明らかにし、よりDNA結合配列選択性の高い人工DNA結合タンパク質を創製することを目的とする。本年度は、このDNA結合タンパク質の認識配列として、5’末端にTが必要であることに着目し、この認識に寄与するアミノ酸残基に関する検討を行った。そのためにまず、このDNA結合タンパク質の発現および精製条件の検討と、DNA結合活性の評価系の確立に取り組んだ。その結果、培養細胞内でのルシフェラーゼレポーターアッセイによる間接的なDNA結合活性の評価に加えて、大腸菌発現系からの精製タンパク質を用いた物理化学的な評価系を確立した。一連の点変異導入体を発現するベクターを作製し、細胞内でレポーターアッセイを行った結果、リピートドメインのN末端側ドメインに存在するリピート類似配列に含まれる芳香環を持ったアミノ酸残基が5’-Tの認識に特に重要であることを示唆する結果を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養細胞を用いた実験系においては、予定通りに実験をすすめることができた。その結果、植物病原菌由来の転写因子様タンパク質のN末端ドメインのDNA結合への寄与を示すことができ、目標を達成できたと考えている。一方、このDNA結合タンパク質の大腸菌内での発現量が予想に反して不十分であることが明らかになった。しかし検討を重ね、最適な条件を見出すことが出来た。また、精製タンパク質を用いたDNA結合活性の評価においても、従来用いられてきた電気泳動法ではタンパク質の凝集が生じてしまうことが明らかになり、新しい評価法を検討する必要に迫られた。この問題点に関しても、ゲルの種類を変えた結果、適切な手法を見出すことが出来た。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず、既に確立した発現・精製システム、および、DNA結合活性の評価システムを用いて、5’末端のTの認識に重要であることが示唆されるアミノ酸に変異を導入した変異タンパク質、並びに、N末端ドメイン以外の領域に関しても機能解析を行う予定である。また、この5’末端のTの認識に重要であるアミノ酸を含む領域をランダム化することによって、5’末端の塩基認識の選択性を変え、新しい塩基認識能を持った人工DNA結合タンパク質が得られると期待される。そこで、認識の変換を目指したタンパク質ライブラリーの作製と分子進化によるセレクションを行う。これまでに、このタンパク質を用いた分子進化は行われていないため、初めに、大腸菌を用いた1-ハイブリッド法がこのタンパク質に適用できるのかどうか、野生型(ポジティブコントロール)を用いてシステムの最適化を行う予定である。その後、作製したライブラリーを用いて新しいDNA結合選択性の獲得を目指したセレクションを行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
このDNA結合タンパク質の発現・精製段階において、適切な精製タンパク質を得るための条件検討に予想以上の時間を要した。また、DNA結合活性の評価系においても、従来法では難しいことが判明し、新たな評価法を検討する必要が生じた。加えて、当初予定していなかった出産により、平成25年1月21日~平成25年3月15日まで8週間の産後休暇を取得した。これらの要因により、精製タンパク質を用いたDNA結合活性の評価を次年度に行うことにした。平成24年度中に、タンパク質の発現・精製条件および評価系の確立を完了しているため、平成25年度には、そのシステムを用いて、速やかにDNA結合活性の評価に取り組むことができると考えている。また、平成25年度計画では、平成24年度に行った細胞実験の結果をもとに研究を進めることができるため、並行して研究を進める予定である。
|