2012 Fiscal Year Research-status Report
細胞増殖のシグナル伝達に関わるNADPHオキシダーゼ1の活性制御と情報伝達機構
Project/Area Number |
24510299
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
田村 実 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (00128349)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | NADPH oxidase / Noxa1 / superoxide / ROS / Nox1 / Nox2 |
Research Abstract |
1. Nox1の活性化因子タンパク質の役割を知るために、Noxa1の変異型と短縮型の作成を行い、前年度に確立したNox2無細胞活性化系を用い(ABB、2012)、活性化に与える影響を検討した。その結果、興味深いことにNoxa1のC末端を削るほどNox2活性化能が亢進することを見出した。このことからNoxa1の末端部分が活性に必要ないこと、またこの部分がNoxa1の自己制御に関わっていることを明らかにした。 2. 短縮型Noxa1のkineticsを詳細に検討した結果、予想に反してNox2への結合能は全長と比べて変わっておらず、他の活性化因子Noxo1、Racとの結合能もさほど変わっていないことが判明した。一方、Vmaxは明らかに上昇し、またFADへの結合能は強められた。さらにNoxo1なしでの活性も全長Noxa1に比べて増加した。この場合、短縮型のNox2複合体に対する親和性はやや下がったが、全長の場合と比べると変化ははるかに小さかった。 3. Noxa1短縮型の活性化能は至適条件で行うと、Nox2の古典的活性化因子p67/p47ペアーに匹敵することが明らかになった。 4. Noxa1とNoxo1により活性化されたNox酵素の安定性を検討したところ、半減期は37℃でわずか1.2分であり、これは短縮型でも変わらなかった。またp67/p47と比べるとはるかに短かった。 5. Caco-2細胞を用い、ヒトNox1, Noxa1, Noxo1のcDNAをトランスフェクトすることによりin vivoでNox1再構成系を構築した。細胞をEGFで刺激すると、O2-発生が亢進した。次年度の予備実験としてbeta-Pixの効果を検討した。 6. Nox1精製のプロジェクトについては、Nox1 complexに対するウサギ抗体を作成し、抗体カラムクロマトによるアフィニティー精製の準備を完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. NADPH oxidaseの活性化のin vitro(無細胞)活性化については、活性化因子Noxa1について発見があり、これまで不明だったNoxa1の活性が低い理由が明らかになった。また、in vitro活性化の際に必要な重要な情報を得ることができた。 2. 細胞レベルでのNox1活性化については、Caco-2細胞を用いてNox1と活性化因子Noxa1、Noxo1をトランスフェクトするによりモデル系を確立することができた。 3. Nox1の精製については、酵素源として上記のCaco-2でNox1を発現させることに成功した。また、アフィニティークロマトグラフィーのための抗体も用意した。しかし、準備を整える段階までで、実際の精製に取りかかることはできなかった。この点は計画よりも遅れている点である。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 今年度の発見をもとに、Noxa1の活性型(短縮型)を用いてNox1の無細胞活性化系を確立する。酵素源としてはまずはCaco-2の形質膜を用いる。 2. 確立した無細胞活性化系を用いてNox1の活性調節にかかわると思われるタンパク因子を用いて活性化への影響を検討する。候補としてbetaPix、SOD、およびアクチンを試みる。betaPixは本酵素の活性をオンにする上流からの指令経路として重要である。また、SODは本酵素の生成物が活性酸素であることから、酸化ストレスとの関連で重要である。すなわち負のフィードバックの働きが予想される。アクチンは細胞骨格の成分であり、我々はNoxの活性複合体を保持して安定化する可能性を見出している。 3. 純粋無細胞系の実現のために不可欠なNox1精製については、前年度準備した抗体を用いてアフィニティーカラムを作成し、Caco-2細胞での発現したNox1の単離精製をめざす。この過程ににおいても、上述の活性型Noxa1が活性検出のプローブとして役立つことが期待される。 4. Nox1は細胞増殖や血圧調節など体内で重要な役割を持ちながら、その分子レベルでの解明がおくれている。初めての純粋無細胞系の確立は、謎の多い本酵素の性質や活性化機構の解明において大きな一歩になると思われる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述の実験を遂行するために必要な消耗品(試薬、合成DNA、培地、プラスチック製品など)に用いる。その他、学会発表のための旅費に用いる。
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