2012 Fiscal Year Research-status Report
肝類洞内皮細胞および癌細胞由来リンパ球制御物質の探索
Project/Area Number |
24510300
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
狩野 有宏 九州大学, 先導物質化学研究所, 准教授 (30403950)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 肝類洞内皮細胞 / ガン細胞 / 免疫抑制因子 |
Research Abstract |
本年度は種々の細胞が混在している状態である肝非実質細胞分画での免疫抑制活性を検証した。しかし実験の結果、想定したレベルの活性が観察できなかった。この理由の一つにはやはりクルードの細胞集団であることが原因であろうと考え、マグネットビースを使い肝類洞内皮細胞(LSEC)の純度を高めることを試みた。内皮細胞特異的表面抗原であるCD144、およびCD146 に対する抗体を用い検討した結果、ビオチン標識抗CD144抗体とアビジンマグネットビースとを組み合わせることで、 90% 程度までLSECの純度を高めることに成功した。 大腸ガン細胞CT26.WTの培養上清中の活性を限外濾過フィルターと透析膜を使って解析した結果、活性因子の分子量が3,000よりも小さいことが予想された。そこで逆相クロマトグラフィーによる分画精製を実施した。CT26.WT細胞培養上清は分画分子量10,000の限外濾過フィルターとC18逆相カートリッジにて前処理を施した。このサンプルを凍結乾燥後、C18逆相カラムODP-40を使用しアセトニトリルの濃度勾配にて溶出し、各分画を分取した。この分取画分について脾細胞培養システムで検証した結果、大きく分けて二つの溶出分画に活性が認められた。この時点で前処理後サンプルに対しおよそ50 ~ 100倍(培養上清に対し1000倍以上)程度に活性が濃縮されていることが判明した。またこれらの活性サンプルを種々の酵素で処理した結果、ペプチダーゼに一部感受性であることが明らかになった。これらの結果よりガン細胞から分泌される免疫抑制因子は少なくとも一部はペプチドであることが示唆され、この因子の同定に大きく近づいたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LSEC培養上清の免疫抑制活性の検証については未単離状態の非実質細胞分画では明確(十分に高い)な抑制活性は観察できなかった。そこでLSEC特異的表面抗原に対する抗体とマグネットビーズを使いLSECの純度を高めることを目指した。この結果90% 程度までLSECの純度を高めることに成功した。しかし無血清条件でのLSEC培養とその培養上清の免疫抑制活性の検証には至っていない。 CT26.WT細胞培養上清中の免疫抑制活性の精製濃縮は、逆相クロマトグラフィーを使うことで大きく進展した。これまでに限外濾過フィルターによる分子量の推測は試みていたのだが、おそらくは実験操作中のロスのために安定な結果が得られていなかった。しかし透析により活性が消失するという現象がしばしば観察されたことから、これらを組み合わせて検証を続けた結果、分子量1,000 ~ 3,000よりも小さいことを示唆するデータが得られてきた。そこで当初の硫安沈殿 → 疎水クロマトグラフィー → イオンクロマトグラフィーという計画を変更し、逆相クロマトグラフィーによる分析を実施した。その結果、逆相カートリッジによる前処理において、活性成分が10倍以上濃縮される結果となった。さらに逆相クロマトグラフィーを使ったアセトニトリルによる溶出によりそこから50 ~ 100倍濃縮が達成できた。実験計画の一部変更はあったが、ここまで目標としていた結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
LSECは抗体とマグネットビーズにより90%程度まで純度を高められたことから、この細胞を使った無血清培養を実施し、免疫抑制活性を検証する。細胞の単離精製にはコスト的、時間的な制約が生じ、またある程度のロスも避けられない。従って無血清培養が確認できた後には、限外濾過膜で濃縮しマウスに免疫することで、抗体作成を試みる。さらにLSECから mRNAを回収し、cDNAライブラリー作成の準備を実施する。 CT26.WT細胞培養上清中の活性因子は、これまでに逆相クロマトグラフィーによる分画濃縮が達成できた。活性因子の分子量は1,000 ~ 3,000 よりも小さいことが推測されていることから、クロマトグラフィーと質量分析を組み合わせたLC-MSにて解析を実施する。この解析により活性成分の分子量や組成情報がより詳細に絞り込まれると考えられることから、そのデータを元に次の精製計画を立案する。またもう一つのガン細胞株である乳がん細胞4T1の培養上清も同様に進める。CT26.WT細胞での経験がある事から順調に活性成分の濃縮が進められるものと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初イオン交換クロマトグラフィー装置の導入を予定していたが、予想よりも大幅に分子量が小さいことが推測されたために遠心濃縮システムの導入に切り替えた。ELISAの負担軽減のためのプレート洗浄機の導入と合わせ、その差額が約30万円ほどであった。次年度にはこの結果を踏まえ、LC-MS装置での解析を予定している。しかしこの装置は身近に無く、また結果を分析するためのデータベースやその経験も必要なことから、外部に委託する予定である。その費用にこの30万円を予定している。残念ながら予算的に十分とは言いがたいが、次の精製計画を立てるためにある程度十分なデータが得られると考えている。その計画では新しい異なるタイプのHPLC用カラムが必要と予想されるが、それには30~50万円ほど想定している。他通常の細胞培養用試薬、ディスポ製品、マウスの購入を予定している。
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