2013 Fiscal Year Research-status Report
肝類洞内皮細胞および癌細胞由来リンパ球制御物質の探索
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24510300
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
狩野 有宏 九州大学, 先導物質化学研究所, 准教授 (30403950)
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Keywords | ガン細胞 / 免疫抑制 / 液性因子 |
Research Abstract |
前年度までにガン細胞のCT26.WTと4T1の培養上清中に特徴的な免疫抑制活性が存在することが判明した。そこで本年度はこれら因子の単離同定に注力した。CT26.WT細胞培養上清は逆相クロマトグラフィーによる分析に成功し、二つの溶出分画に活性が認められることが判明していたことから、液体クロマトグラム質量分析法(LC-MS)による受託解析を実施した。その結果を各分画の活性の有無と比較することで限られた数の候補因子を挙げることに成功した。しかしながら、今回のLC-MS解析は多検体かつ網羅的解析に適した方法を取ったため、引き続き高品質の差分解析が必要と判断された。また化学組成情報は得られたものの、物質の推測に至らない未知因子も含まれていた。一方、4T1培養上清中に含まれる活性因子を限外濾過膜でまず分画した結果、分子量30から100 kDaの間に活性が認められることが明らかとなった。このように大きな分子であることから、この活性因子はタンパク質であることが推測された。そこでイオン交換カラムによる精製を進めた結果、ある程度の精製、濃縮が達成できたものの単一のタンパク質とはまだ言える状況では無く、少なくとももう一段階の精製方法を組み入れる必要があると考えられた。そこでこのイオン交換カラムにて回収した精製産物を、308個のサイトカインを同時に評価できるプロテインアレイにて解析した結果、特定のタンパク質が濃縮されていることが明らかとなった。しかし、ここで使用したプロテインアレイもまた網羅解析用のため、そのタンパク質が確かに濃縮精製されているかどうかの確認を改めて実施必要があると判断された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画において、本年度は単離精製した肝類洞内皮細胞(LSEC)の培養上清からイオン交換クロマトグラフィーによる免疫制御因子の単離精製を実施する予定であった。ただし当初からガン細胞由来因子の解析と同時進行し、より見込みのある方に注力することを想定していた。実際のところ、本年度に入ってからCT26.WT細胞由来因子に加え、4T1細胞由来因子の解析も大きく進展したことから、これらガン細胞を使った研究を優先した。CT26.WT由来因子に関しては、LC-MSと逆相クロマトグラフィー分画物の活性とを比較区検討することで、未だ同定には至っていないもののいくつかの候補ペプチド性因子を挙げることができた。4T1細胞由来因子では分子量分画が成功し、タンパク質であることがほぼ間違いない状況にまで至った。イオン交換の前にもう一段階の精製手法を取り入れれば、その後ゲル濾過クロマトグラフィーによる単離まで見込める状況にある。ただし本年度はプロテインアレイまで実施し、すでに候補因子を大きく絞り込めた段階至っている。
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Strategy for Future Research Activity |
4T1由来因子に関してはプロテインアレイにより候補因子は絞り込まれたことから、その市販抗体を使って精製分画中に濃縮されていることを確認する。さらに抗体を使って中和処理、あるいは欠乏処理を行い免疫抑制活性を担う中心分子であるか否かを確認する。これら抗体を使った検証作業において候補因子ではないと判断された場合には活性タンパク質の単離精製を進める。イオン交換カラムによる精製濃縮が部分的に成功していることからこれにもう一段階異なる操作を加える方針である。具体的にはイオン交換の前に疎水クロマトグラフィーを加え、そしてイオン交換後、ゲル濾過クロマトグラフィーにて最終精製をする予定である。精製産物はTOF-MSのペプチドマッピングで同定可能と考えているが、これが難しかった場合には、MS-MSによるアミノ酸配列決定操作を行う予定である。CT26.WT由来因子に関してはLC-MSにて高精度差分解析の実施と、未知因子の構造決定のため、より多くの試料が必要となる。そのため培養上清の回収から部分精製、分画物の活性測定までを引き続き実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
4T1培養上清中の免疫制御因子の解析が想定以上に進展し、その結果、LSEC由来因子に優先して実施した。プロテインアレイという予定していなかった消耗品を購入したが、イオン交換カラムなどLSEC由来因子の単離精製に予定していた物をそのまま使用し、またLSEC単離用の酵素、バッファー等を節約できたため、その差額として繰越金が生じた。 4T1由来の候補因子を絞り込むことができた。そこでその確認のため、抗体の購入に使用する。
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