2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24510313
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
藤原 悟 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究主幹 (10354888)
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Keywords | 筋収縮調節機構 / 蛋白質ダイナミクス / 中性子散乱 |
Research Abstract |
本研究は、蛋白質ダイナミクスという新しい視点から筋収縮調節機構を捉え、筋収縮調節における蛋白質ダイナミクスの役割を明らかにすることを通して、筋収縮調節の分子機構の解明に資することを目的としている。そのため、蛋白質ダイナミクスの直接測定が可能な唯一の方法である中性子非弾性散乱法を用いて、骨格筋・心筋において筋収縮調節を担う細いフィラメントのダイナミクス測定を行う。本年度は、年度初めのJ-PARCハドロン施設の事故の影響で中性子散乱実験実施ができなかったため、中性子散乱スペクトルの解析法の確立を目指して、H24年度中の実験において取得したデータの解析を実施した。その結果、溶液試料について、中性子非干渉性弾性散乱スペクトルおよび準弾性散乱スペクトルの解析法を確立することができた。低Ca2+濃度下及び高Ca2+濃度下の細いフィラメント、そしてF-アクチンのそれぞれで、揺らぎの程度が異なることを明らかにした。さらに細いフィラメントとF-アクチンの比較から、この違いの由来はトロポニン-トロポミオシン系からであることが示唆された。このような細いフィラメントのCa2+濃度によるダイナミクスの変化は、筋収縮調節機構においてダイナミクスの調節が重要な役割を果たすことを示唆する重要な結果である。さらに、細いフィラメントの再構成実験を行い、再構成が可能であることをX線小角散乱測定により確認した。これは、細いフィラメント各成分からの中性子散乱スペクトルの抽出に向けた重要な結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
溶液状態の試料からの中性子散乱スペクトルの解析法を確立したことは、筋収縮調節系における蛋白質ダイナミクスの解析のみならず、広く蛋白質ダイナミクス研究を展開する上で重要な成果である。さらに、細いフィラメント再構成に成功したことは、蛋白質重水素化と組み合わせた細いフィラメント各成分からのスペクトル抽出の上で重要な進展である。したがって研究は順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
細いフィラメントのダイナミクスの由来を明らかにするために、細いフィラメント各成分からの中性子非弾性散乱スペクトルを抽出することを目指す。そのために、トロポニン、およびトロポミオシンの大量発現を行い、細いフィラメントを再構成し、この再構成系についての中性子非弾性散乱実験を行う。そして、これらの成分の重水素化を行い、重水素化成分を含む再構成細いフィラメントの中性子非弾性散乱実験を行う。これらのスペクトルの統合的な解析から各成分由来のスペクトル抽出を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、海外の施設を用いて中性子非弾性散乱実験を行う予定であったが、前年度の実験から国内のJ-PARC施設で測定可能ということが明らかとなったために海外旅費を使用しなかった。さらに、J-PARCハドロン施設での事故のために予定されていたマシンタイムがキャンセルされたため、試料セル等の中性子非弾性散乱実験関係の消耗品費を使用しなかった。そのために当該研究費が発生した。 次年度は、細いフィラメントの構成成分のトロポニン及びトロポミオシンの大量調製を行い、再構成フィラメントの中性子非弾性散乱実験を目指す予定である。したがって、次年度請求の研究費は、中性子非弾性散乱実験及びその解析のための物品費、そして成果発表のための旅費・論文校正費として使用予定である。
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