2014 Fiscal Year Research-status Report
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24510313
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
藤原 悟 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究主幹 (10354888)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 筋収縮調節機構 / 蛋白質ダイナミクス / 中性子散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、蛋白質ダイナミクスという新しい視点から筋収縮調節機構を捉え、筋収縮調節における蛋白質ダイナミクスの役割を明らかにすることを通して、筋収縮調節の分子機構の解明に資することを目的としている。そのため、蛋白質ダイナミクスの直接測定が可能な唯一の方法である中性子非弾性散乱法を用いて、骨格筋・心筋において筋収縮調節を担う細いフィラメントのダイナミクス測定を行う。本年度は、細いフィラメントの構成成分のトロポミオシン、トロポニンの重水素化を目指したが、重水素化システムの立ち上げの遅れから、重水素化蛋白質調製完了が困難となったこと、及び中性子施設の運転状況から中性子非弾性散乱実験の実施が困難と予想されたことから、蛋白質重水素化は継続作業とし、心筋症関連のトロポニン変異体が細いフィラメントに及ぼす影響について調べた。そのために、心筋症関連トロポニン変異体あるいは野生型のトロポニンを含む細いフィラメントを再構成し、それらの再構成細いフィラメントのX線小角散乱実験を±Ca2+の条件下において行った。野生型トロポニンを含む細いフィラメントと心筋症関連トロポニン変異体を含む細いフィラメントの散乱曲線の違いから、トロポニン変異により、筋収縮調節において重要な働きを行うトロポミオシンの運動が影響を受けることが示唆された。この結果は、トロポニン-トロポミオシン相互作用の重要性を示すとともに、心筋症関連トロポニン変異体を含む細いフィラメントのダイナミクス測定の疾病発症機構解明への貢献の可能性を示す、今後の研究の展開にとって重要な結果と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
心筋症関連トロポニン変異体を含む細いフィラメントについての新たな知見を得たことは重要な進展ではあるが、重水素化システムの立ち上げの遅れのために重水素化蛋白質調製を完了できなかったことは進展の遅れと言わざるを得ない。現在、重水素化システム立ち上げは順調に進んでいるので、次年度中には、重水素化蛋白質調製を完了し、重水素化蛋白質を含む再構成細いフィラメントのダイナミクス測定を目指したい。
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Strategy for Future Research Activity |
トロポミオシン及びトロポニンの重水素化を行い、アクチンと再構成した重水素化成分を含む細いフィラメントの調製を行う。X線散乱等による試料の確認を行うと共に、中性子非弾性散乱法によるダイナミクス測定を行う。
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Causes of Carryover |
蛋白質重水素化及び中性子非弾性散乱実験を行う予定であったが、重水素化システムの立ち上げの遅れのために重水素化蛋白質調製完了が困難となったこと、及び中性子施設の運転状況から中性子非弾性散乱実験を実施しなかったことのために、重水素化及び中性子散乱実験に関連する消耗品類等の経費を使用しなかった。そのために当該研究費が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
重水素化蛋白質調製及び中性子非弾性散乱実験のための消耗品、および状況に応じて成果発表のための旅費あるいは論文校正費として使用する予定である。
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