2012 Fiscal Year Research-status Report
ヒト脳を使用したタウ蛋白凝集体イメージングプローブの新規探索システムの開発
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24510322
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
吉見 立也 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 治療薬探索研究部, 研究員 (30277256)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
滝川 修 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 治療薬探索研究部, 研究室長 (70163342)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / タウ / 治療薬 / PET / 診断薬 |
Research Abstract |
まとめ:アルツハイマー病(AD)におけるタウ代謝異常を標的とした診断薬、及び代謝異常の抑制等による治療薬について、現時点で世界を見渡しても未だ臨床試験で有効な薬剤や療法は開発されていない。我々の目的であるタウを標的とした創薬システムの開発については、前年度においていくつかの物理的ハードルを越えたと考えられる。 成果の具体的内容:現時点までに、東京都健康長寿医療センターとの共同研究により、新鮮凍結脳切片のサンプルを入手し、病理学的解析を始めた。また、東京大学創薬オープンイノベーションセンターへの申請により創薬用低分子化合物ライブラリ20万種の供給が開始され、現時点では9600化合物が手許に届いている。現在、これら低分子化合物をMALDI-TOF/MS飛行時間型質量分析装置(質量顕微鏡)において効率よく検出するため、マトリクスの種類、及び詳細な検出条件についての検討を行う段階となった。同時に、凍結切片を自動で大量に作製する装置について開発を開始した。この装置については、部分的に2013年5月より稼働を開始する予定となっている。 意義・重要性:本研究により、タウに結合する低分子化合物を得られればこれをリード化合物として、タウを標的とした世界初のPET標識化合物の創成、および治療薬の創薬に向けての第一歩となると考えられ、たいへん意義深い。この研究により、高齢化社会を迎える日本の医療の発展に貢献できると考えられ、今後の日本における重要性も高い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
下記2点から精力的に開発を進めており、ほぼ全体図が見える段階になった。 1.質量顕微鏡によるタウの検出条件の確立:予備実験としてADモデルマウスの新鮮凍結切片を用いて、質量顕微鏡による低分子化合物とアミロイドβ蛋白質(40アミノ酸)との同時イメージマッピングを行いイメージ像を得た。またタウのイメージ像を得るために、タウ蛋白質の分解酵素消化断片の解析を行い、数十のペプチド断片の検出が可能であることを確認した。このうち、どのペプチド断片のイメージングが適当か決定する段階となっている。一方、研究分担者滝川の共同研究において質量顕微鏡製造メーカー(島津製作所 田中最先端研究所)よりMALDI-TOF質量分析装置を貸与されることが決定しており、今後この装置を用いて詳細な検出条件の決定を行うこととなる。 2.自動凍結組織切片作製装置の開発:ヒトAD脳新鮮凍結組織から多数の凍結組織小切片を作製する自動作製装置の開発を行っている。昨年度は、主として化合物浸漬用特殊96 wellプレートの開発を行い1000個が納入済みである。また現時点で、ミクロトーム部分の開発を大和光機に依頼、切片受け装置の開発をハートエレクトロニクス及び坂下工業に依頼済みである。1cm角の脳から、組織切片を作成、それを分割して小組織切片とし、開発済みの特殊96 wellプレートの各wellに入れる一連の操作を自動で行うロボットハンドについても昨年度に納入済みで、㈱アイムに依頼しシステムプログラムを開発中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、ロボットシステムの個々の装置の自動化、及び解析システムの開発を順次進めていくことで、大規模低分子化合物自動スクリーニングシステムとして機能するよう完成させることが目標である。 本システムのうち自動凍結切片作製部分は、1cm角の切片を分割する装置、それを載せるスライド、凍結切片作製装置(ミクロトームと切片受け装置)、化合物添加用特殊96wellプレート、質量顕微鏡用96ホルダー及び、上記切片やプレートの移動、それに伴う各種動作を受け持つ医療用ロボットハンドによって構成される。これらの各装置は、所属研究所の研究開発費によって製作・購入されるが、それらの連携を行い自動化をすることにより、大規模スクリーニング装置として完成する。 一方、質量分析イメージングによるタウ及び低分子化合物の検出部分については、まずは上記により自動で作製された切片上におけるタウ蛋白質のペプチド断片によるイメージ解析を行う必要がある。そして、低分子化合物の分布と比較解析するシステムの開発については、早期に進めていく必要がある。 ただし、当初の目的にあった新規ペプチドライブラリーに関しては、低分子化合物ライブラリー20万種のスクリーニングの後に行うこととし、現時点では開発を行っていない。今後の進展度により開発を行うかどうかを決定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現時点では、スクリーニングシステムの個々の装置の完成度を高めること、そしてタウの質量分析イメージング検出のための基礎開発を行うことが重要である。 まずは、ロボットシステムによる連携を行うために、個々の装置の配置のための置き台等の開発と連係動作、及びロボットハンドのティーチングを行うための開発費が必要である。また、質量イメージング解析を行い、得られる大量の画像データを解析して結合した化合物を特定するという段階には、病理データとの比較解析及びソフトウェアの開発を含むコンピュータシステムの開発が必要となる。 一方、アルツハイマー病の診断薬、治療薬に関しては現時点においても開発・治験を行っている化合物が存在することから、それらの開発状況を逐次確認しながら研究を進める。そのため積極的に学会に参加して情報収集を行うために学会参加費用が必要である。同時に、PET解析用のリード化合物、または治療薬となり得るような化合物を発見した場合には、専門家との共同研究を行うことにより早期に臨床試験に取りかかれるような人脈作りもしていく必要がある。 当初の計画では、画像解析等のシステムソフトウェア開発を行うためのワークステーションの購入申請をしていたが、それを後回しにして各種装置の開発を行っていたため、コンピュータ機器購入分の研究費は前年度から繰り越されている。今後、システムの開発状況に応じて、導入を検討する。
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[Journal Article] Detection of vertebrate-type steroid hormones and their converting activities in the neogastropod Thais clavigera (Kuster, 1858)2012
Author(s)
Goto Y, Kajiwara M, Yanagisawa Y, Hirose H, Yoshimi T, Umemura M, Nakano H, Takahashi S, Shida Y, Iguchi T, Takahashi Y, Miura T
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Journal Title
J Mollus Stud
Volume: 78(2)
Pages: 197-204
Peer Reviewed
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