2012 Fiscal Year Research-status Report
卵ゲノム解析による琵琶湖の日本在来コイ個体群の維持機構の解明
Project/Area Number |
24510323
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
馬渕 浩司 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (50401295)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 在来種保全 / コイ / 琵琶湖 / 産卵 |
Research Abstract |
本研究は、環境省レッドリストの2007年度版に「絶滅のおそれのある地域個体群」として掲載された琵琶湖の日本在来コイについて、その保全に資するために初めて繁殖生態を調査するものである。琵琶湖沿岸及び周辺水域の水草帯に、様々な時期に生み付けられた卵について、在来、導入、交雑系統の判別をゲノム解析により行い、ほぼ純粋な在来コイが、どのような時期に、どういった環境で産卵・繁殖しているのかを明らかにすることを目的としている。 初年度である24年度は、過去2年間予備調査を行ってきた湖北町尾上周辺で同様の調査を行った。すなわち、産卵シーズンである4月終わりから7月の終わりにかけて、およそ半月に一度の定期サンプリングに加えて、地元の湖北野鳥センターからの情報に基づいて産卵直後にサンプリングを行うという調査であったが、過去の予備調査時とは異なり、昨年度は明瞭な集中産卵が確認されなかった。浅瀬でコイが「暴れる」ことで分かる産卵行動は、集中して観察される時期(2-3日間)が例年だと年に2回ほどあり、野鳥センターからの通報で必ず検出できたのだが、昨年度はそれが一度も無いままシーズンが終了してしまった。地元の漁師さんの話によると、やはり例年とは異なる異常な事態だったそうだが、結果的に、採集できた卵の数は当初の予定の1/10にとどまった。採集された卵を解析した結果、比較的純粋に近い在来系統の卵は、4月の末と5月の始めに湖岸で、6月の初めに沖の州で検出された。しかし、この結果は少ない卵数に基づくものであり、本年の産卵傾向を代表していない可能性も否定できない。在来コイの時空間的な産卵傾向をつかむためには、来年度以降も含めて複数年のデータと比較し、慎重に検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
過去2年の予備調査とは異なり、昨シーズンは明確な集中産卵が観察されなかった。採集できた卵数も予定の1/10と少なく、このため、当該年の調査地域における時空間的な産卵傾向を把握し切れなかった可能性も残ったが、得られたデータは、次年度以降積み重ねていくデーターの比較材料として、当該年度の重要な成果であることに変わりはない。一方、平行して行った聞き込み調査で、これまで調査範囲に含めていなかった新たな環境(川の中流部)でもコイの産卵が観察されることが判明した。後者の成果により、今年度以降の研究計画を、調査地に関してより適切なものに変更することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査地域にはなかった新しいタイプの環境(川の中流域)での産卵行動を調べるために、調査地域をもう一ヵ所追加することとした。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度は採集された卵が予定より少なく、その分の解析費用を今年度に回すことが可能となった。この繰り越し分は、今年度新たに追加する調査地域から採集される卵の解析費用に当てる計画である。
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Research Products
(4 results)