2013 Fiscal Year Research-status Report
卵ゲノム解析による琵琶湖の日本在来コイ個体群の維持機構の解明
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24510323
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
馬渕 浩司 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (50401295)
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Keywords | 在来種保全 / コイ / 琵琶湖 / 産卵 |
Research Abstract |
本研究は、環境省レッドリストの2007年度版に「絶滅のおそれのある地域個体群」として掲載された琵琶湖の日本在来コイについて、その保全に資するために初めて繁殖生態を調査するものである。琵琶湖沿岸及び周辺水域の水草帯に様々な時期に生み付けられた卵について、在来、導入、交雑系統の判別をゲノム解析により行い、ほぼ純粋な在来コイが、どのような時期に、どういった環境で産卵・繁殖しているのかを明らかにすることを目的としている。 本研究における調査の2年目である平成25年度も、湖北町尾上周辺で前年までと同様の調査を行った。すなわち、産卵シーズンである4月終わりから7月の終わりにかけて、およそ半月に一度の定期サンプリングに加えて、地元の湖北野鳥センターからいただく産卵観察情報にもとづいてサンプリングを行うという調査である。初年度は過去の予備調査時とは異なり、大雨による水位の急上昇が例年の産卵盛期に見られなかったためか、明瞭な集中産卵(例年だと年に1-2回観察される)が確認されなかった。2年目の本年度は、初年度よりさらにシーズン中の降雨が少なかったためか、やはり集中産卵は確認できなかった。 採集された卵のmtDNAを解析した結果、初年度と同様、導入系統のハプロタイプは、シーズンの前半に現れる傾向があった。しかしこの傾向は明瞭な集中産卵のない年の傾向なのかもしれず、結論を下すには少なくとも次の最終度の調査結果を待って慎重に検討する必要がある。核ゲノムにもとづく交雑状況の解析は、現在、より効率的な手法を開発中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
明確な集中産卵が観察されないなど、初年度、2年目と本研究で観察した産卵シーズンの推移は、地元の方から聞く(あるいは前々年の予備調査で経験した)例年のパターンとは異なっている。「一般的な」産卵傾向を把握するのが難しい状況になっているが、しかしこれも実際に起こった現象であり、貴重なデータである。なお、2年目に新たに追加した調査地(川の中流域)では、これも地元の人からきいた例年の状況と異なり、産卵が全く観察されず、卵も採集できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度と2年目の産卵データは、例年との気象状況や人工的な水位調節の違いに注意しながら解釈することが重要である。昨年追加した調査地では卵が採集されず、この場所での複数年のデータ比較が不可能になったことから、最終年度にはここでの調査を行わないこととする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度は、新たに追加した調査地で卵が採集できず、その分の解析費用が不要になったが、これは故障した解析機器の買い換えに使用したため、最終的にはほぼ当該年度の研究費を使い切った。 次年度使用額となった29002円は、核ゲノム解析法の改良に必要な試薬代として使用する。
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