2012 Fiscal Year Research-status Report
遺伝解析と生態特性把握による雑種タンポポの起源地と拡大経路の推定
Project/Area Number |
24510330
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
伊東 明 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40274344)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平山 大輔 三重大学, 教育学部, 准教授 (00448755)
松山 周平 京都大学, 学内共同利用施設等, 研究員 (30570048)
名波 哲 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70326247)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 移入種 / 在来種保全 / 雑種化 / タンポポ / 遺伝子汚染 / 葉緑体DNA / ハプロタイプネットワーク |
Research Abstract |
1.在来二倍体タンポポ葉緑体ハプロタイプの地理的変異:東京から四国の範囲で、カンサイタンポポ33個体群、カントウタンポポ(トウカイタンポポを含む)7個体群から頭花と葉のサンプルを採取した。各個体群2~4個体(計90個体)について葉緑体DNAの8遺伝子間領域(合計3648bp)の塩基配列を決定し、ハプロタイプネットワークを作成した。全部で20のハプロタイプが見つかり、カンサイタンポポのみ、カントウタンポポのみ、2種の両方に見られるハプロタイプの3種類に区分できた。これら3タイプの区分に必要な2つの遺伝子間領域(計376bp)を抽出した。 2.雑種タンポポの起源の推定:東京から四国の範囲で採取したセイヨウタンポポ、及び、雑種タンポポ計40個体について、上記2遺伝子間領域の塩基配列を決定し、ハプロタイプを調べた。その結果、三倍体雑種からは在来タンポポで見られた3タイプがすべて見つかった。一方、セイヨウタンポポの全個体と四倍体雑種の85%の個体のハプロタイプは、在来種からは見つからなかったタイプであり、三倍体雑種と四倍体雑種の起源が違うことが示唆された。 3.マイクロサテライト解析:大阪、京都周辺のカンサイ、セイヨウ、雑種タンポポ(計710個体)について6~9のSSR遺伝子座の遺伝子型を調べ、ベイズ理論による方法(STRUCTURE解析)を含む複数のクラスター分析で雑種タンポポの遺伝構造を解析した。その結果、雑種タンポポのクローン多様性が高いこと、集団間の遺伝的違いが大きいことが分かった。一方で、複数の集団に出現するクローンも見つかった。また、上記1)の在来タンポポ個体についてもマイクロサテライト分析を開始した。 4.雑種タンポポの生態特性の多様性:上記3で見つかった広域に分布する雑種クローン6種類の果実を播種し、生態特性比較のための栽培実験用の種子を採取するための個体の栽培を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.在来二倍体種のカンサイタンポポとカントウタンポポを葉緑体DANでほぼ判別することが出来るようになった。選択した2遺伝子間領域を用いることで、雑種タンポポの母親種がカンサイタンポポかカントウタンポポかの特定が可能になった。ただし、今のところ、亜種の関係にあるカントウタンポポとトウカイタンポポの区別と同種内での地理的な判別はできておらず、雑種形成地域を詳細に特定することは難しい。 2.予定通り、葉緑体DNAを使って、雑種タンポポの母親種を特定することができ、この方法が雑種形成地域の推定に有効であることを示すことができた。ただし、在来種から見つからなかったハプロタイプを持つ四倍体雑種タンポポが多く見られたため、このハプロタイプがどの在来タンポポに由来するかを更に調べる必要がある。 3.SSRデータに基づいたクラスター解析で雑種タンポポの遺伝的多様性(クローン判別)と遺伝構造の解析が可能であることが確かめられた。予備的解析から、雑種タンポポの遺伝的多様性が高い一方で、広範に分布するクローンがあることが示唆された。 4.SSRデータを利用して栽培実験に必要な雑種クローンが選択できたが、種子数が十分でなかったため、栽培実験は開始できなかった。ただし、選択したクローン個体を栽培することができ、実験に必要な種子を確保する準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
1.在来二倍体タンポポ葉緑体ハプロタイプの地理的変異:サンプル数の少ないカントウタンポポを中心に北陸、中部、関東地方の在来二倍体種のサンプルを追加して、ハプロタイプネットワークを充実させる。また、サンプル数を増やすことで雑種のみから見つかったハプロタイプを持つ在来種を探索する。すべてのデータを統合して、在来二倍体種のハプロタイプマップを完成させる。 2.雑種タンポポの起源の推定:雑種タンポポのサンプル数とサンプリング地域を増やして、本年度と同じ解析を継続する。1の結果と合わせて、雑種タンポポの母親種と形成地域、拡大過程を推定する。 3.マイクロサテライト解析:解析サンプル数と地域を増やして、分析を継続する。雑種だけでなく在来種のマイクロサテライト分析も追加する。雑種と材ら種のデータを総合してクラスター解析で分析し、雑種の形成地域を推定する。 4.雑種タンポポの生態特性の多様性:広範に出現する雑種クローン6種類とカンサイタンポポ、セイヨウタンポポを対象に栽培実験を実施し、異なる光環境での発芽、成長、休眠特性を明らかにする。これらの生態特性から雑種タンポポの生育環境を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、予定していた栽培実験が開始できなかったため、必要な謝金と物品費の支出が減り、使用総額が予定より366,094円少なくなった。栽培実験の準備はすでに整っており、次年度中に開始するため、残額は栽培実験経費として次年度予算と合わせて使用する。
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