2014 Fiscal Year Annual Research Report
中国農村の基層ガバナンスと政府・市場・コミュニティ―内陸四村の比較分析
Project/Area Number |
24510336
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田原 史起 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (20308563)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 中国 / 基層ガバナンス / 内陸農村 / 政府・市場・コミュニティ / 比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
課題最終年度にあたる2014年度においても,引き続き現地調査を実施した。まず,8月には貴州省晴隆県の鳳凰村に通算三度目の訪問と調査を実施した。次に,本課題立案時の本来の候補地であった山西省において,新しい定点観測村を設けるべく,ゼイ城県南衛郷新南張村への第一回訪問・調査を3月に行った。 前年度までの河南,湖北の両調査地,および先行する課題で取り組んだ江西,甘粛の両調査地の知見も加えて次のように言うことができる。一般に資源が欠乏しているように見える内陸農村の間にあっても,異なる地域を比較してみることで,現在において当該地域が相対的に多く依拠している資源の領域が見えてくる。それこそが,当該地域の強みである可能性を秘めている。「足を削って靴に合わせる」のではなく,相対的に優勢な資源に着眼し,それを助長することが重要ではないか。本課題の比較分析を通じて得られる初歩的な結論は,以下のとおりである。第一に,「共」的事件の南北の違いについて: 北方農村では,「集体」の記憶がまだ強く,村の公式リーダーがガバナンスの中核となる可能性を秘めている。これに対し,南方農村では「集体」は優勢な資源ではないため,家族勢力とそれら連なる「第三種力量」が重要な役割を果たす。第二に,「私」的資源の発展,農村ビジネスの発展は,高度な「公共性」をもちうるという点である。私的経営の第二段階(出稼ぎ経済)から第三段階(農村ビジネス)への移行を援助することが重要である。同様に,西部の山岳地域でも,とりわけ鉱物資源を扱う経営者などと地元コミュニティとのつながりを橋渡すべきである。第三に,一部地域ですでに成功している「公」と「共」の組み合わせ方として,基層組織自身が「共」的資源を動員して事業を完遂することを前提に,政府が事後的に「公」的資源を投入するという手法は,結果的には「共」的な力を強化することにもつながる。
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