2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24510337
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
栗原 浩英 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (30195557)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際協力 / 地域協力 / 地方政府 / ベトナム / 中国 |
Outline of Annual Research Achievements |
相互に隣接する雲南省(中国)とライチャウ・ラオカイ・ハザン各省(ベトナム)との間,広西壮族自治区(中国)とカオバン・ランソン・クアンニン各省(ベトナム)との間には,1950年代末までに,政治・経済・治安を中心とした定期協議に基づく交流関係が構築され,さながら準国家間関係ともよぶべき様相を呈していた。その特徴は次の通りである。(1)基本的に交流関係は同レベルの地方政府間で維持され,例えばラオカイ省人民委員会(省政府)のカウンターパートは,雲南省政府であったが,ラオカイ省と河口県(雲南省)のように密接な連絡関係にある場合には,レベルの如何にかかわらず省政府と県政府との間で協議が行われていた。ただし,中国側ではベトナム側カウンターパートの緊急な受入に際しては,上級に指示を仰ぐことが原則となっていたため,その煩雑さが問題として提起されていた。 (2)経済関係については国家間の貿易とは別に,「地方貿易」という特別のカテゴリーが設けられ,協議を通じて貿易の均衡がとれるような形で毎年の貿易額・品目が決定されていた。貿易は社会主義思想に基づく援助・友好的な性格が強く,相手に不利になるような貿易は回避されていたほか,国境地帯住民による相手国での私的な商売も事実上禁止されていた。同時に,ベトナム各省から中国に輸出しうるような品目がほとんどないことも,1960年代からベトナム側では問題点として認識されていた。これは現在に直結する問題点であるといってよい。(3)国境線が未画定の状態の下で,越境耕作,狩猟による相手国領土への侵入,国境の一部地域の帰属をめぐる係争は存在しており,両国の地方政府ともそれを関知していたが,「同志でもあり兄弟でもある」と形容された良好な中央政府間関係の下でそれが武力衝突を招いたり,国家関係に否定的な影響を及ぼしたりするまでには至らなかった。
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