2012 Fiscal Year Research-status Report
韓国における「早期留学」に関する研究―教育のグローバル化と韓国社会の変容―
Project/Area Number |
24510344
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
小林 和美 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (90273804)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 社会学 / 韓国 / 教育 / グローバル化 / 留学 |
Research Abstract |
本研究は、「早期留学」の研究を通して、韓国社会における教育のグローバル化の進展過程と韓国社会の変化をとらえようとするものである。初年度である本年度は、1990年代から現在までの早期留学の変化の動向の概況把握、創成期および増加期の早期留学についてのデータの収集・分析をおこなった。 1 早期留学の動向の概況把握:韓国における留学に関する基礎統計資料の収集・分析、韓国の早期留学に関する文献および新聞・雑誌記事の収集・分析を行い、統計分析を軸に1993年以降の早期留学の動向を大統領の政権期(5年)ごとに整理した論文「韓国における早期留学の変遷―統計分析による各政権期の特徴―」を執筆した。早期留学現象は、経済のグローバル化が進むなかで、国内の教育システムの問題だけでなく、世界的な経済状況、各政権の政策、労働市場の動向、マスコミ・世論の動向などの影響を受けつつ推移してきたことが明らかになった。この論文をもとに、日韓子育て・子育ち研究会(2012年12月1日、京都テルサ)において「韓国における早期留学の変遷―統計分析を中心に―」と題する研究報告をした。 2 早期留学の創成期および増加期の検討:金泳三政権期(1993-1998年)および金大中政権期(1998-2003年)の早期留学について、文献および新聞・雑誌記事の収集・分析、当時の留学状況についてのインタビュー調査、過去のインタビューデータの再分析を行った。創成期については、早期留学ブームの始まりに政府の外国への門戸開放の動きや国家政策としての「世界化」、順調な経済成長などの政治・経済的背景が大きな影響を与えたことが明らかになった。増加期については、早期留学の増加に1997年の通貨危機が決定的な影響を及ぼしたこと、初等学生の留学が増え始めたこと、家族・親族・友人ネットワークを利用して留学が拡大していったことなどが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、「早期留学」が子どもたちの人生設計における選択肢として現れる政治・経済・社会的条件と早期留学生の増加への韓国社会の対応を、個々の留学生が辿ったライフコースの事例と照らし合わせながら、時期ごとに明らかにしようとするものである。そのため、平成24年度には、早期留学の変化の動向の概況把握、創成期および増加期の早期留学についてのデータの収集・分析を行う計画であったが、おおむね計画通り進めることができた。 早期留学の変化の動向の概況把握は、統計資料の収集・分析を軸に、関連文献や新聞・雑誌記事を用いて行い、その結果を論文にまとめ発表した。さらに、日韓子育て・子育ち研究会で発表したことにより、専門研究者から有益なコメントをもらうことができた。 創成期および増加期の早期留学については、文献および新聞・雑誌記事の収集・分析、インタビュー調査、過去のインタビューデータの再分析を、おおむね予定通り進めることができた。文献および新聞・雑誌記事の収集は、次年度以降実施予定の激増期、安定・還流期についても、かなり進んでいる。ただし、データ分析については不十分な部分があるので、補完していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従い、平成25年度には2006年以降の早期留学の動向についての情報収集と早期留学の激増期のデータ収集・分析、平成26年度には早期留学の現況についての情報収集と早期留学の安定・還流期のデータ収集・分析、平成27年度には1990年代から約20年間の早期留学をめぐる政治・経済・社会的条件の変化と早期留学生の増加への韓国社会の対応の総合的分析を行う予定である。 資料収集やインタビュー調査は、実施予定の年度に縛られず、機会があれば積極的に行っていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、韓国での資料収集およびインタビュー調査を、日程の都合により延期したため生じたものである。次年度の研究費と合わせ、物品費(韓国の政治・経済・社会・教育および早期留学関連図書の購入)および旅費(韓国での資料収集およびインタビュー調査)の一部として使用する計画である。
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