2013 Fiscal Year Research-status Report
韓国における「早期留学」に関する研究―教育のグローバル化と韓国社会の変容―
Project/Area Number |
24510344
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
小林 和美 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (90273804)
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Keywords | 社会学 / 韓国 / 教育 / グローバル化 / 留学 |
Research Abstract |
本研究は、教育を目的とした国際人口移動である「早期留学」の研究を通して、韓国社会における教育のグローバル化の進展過程と韓国社会の変化をとらえようとするものである。2年度目である本年度は、2006年以降の早期留学の動向についての情報収集、早期留学の激増期の検討、早期留学の創成期および増加期における新聞報道の検討をおこなった。 1 2006年以降の早期留学の動向についての情報収集:早期留学経験者(留学生およびその親)、中学校教員、大学関係者、留学斡旋業者に対しインタビュー調査をおこない、早期留学の希少価値が減少し、選択肢が多様化している状況が明らかになった。また、2006年以降、韓国では早期留学について、きわめて多様なテーマで、数多くの研究がおこなわれており、新聞・雑誌でも頻繁にとりあげられていることが明らかになった。 2 早期留学の激増期の検討:盧武鉉政権期(2003年2月~2008年2月)の早期留学について、文献および新聞・雑誌記事の収集・分析、当時の留学状況についてのインタビュー調査、インタビュー・データの分析をおこなった。この時期に早期留学生数は約1万人から3万人へと激増し、留学生の低年齢化、ソウルから京畿道や地方都市への拡散、中国・東南アジアへの留学の増加がみられたことが明らかになった。また、早期留学が大きな社会問題となり、「英語村」の設立や「英語教育都市」の造成などの対策がとられ始めたことなどが明らかになった。 3 早期留学の創成期および増加期における新聞報道の検討:新聞記事の分析を通して、アジア経済危機を前後して韓国社会における「早期留学」のとらえられ方が大きく変わったことを明らかにした論文「韓国における「早期留学」をめぐる新聞報道―1990年から2003年2月まで―」を執筆した(2014年8月刊行予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、「早期留学」が子どもたちの人生設計における選択肢として現れる政治・経済・社会的条件と早期留学生の増加への韓国社会の対応を、個々の留学生が辿ったライフコースの事例と照らし合わせながら明らかにしようとするものである。そのため、平成25年度には、2006年以降の早期留学の動向についての情報収集、激増期の早期留学についてのデータの収集・分析を行う計画であったが、おおむね計画通り進めることができた。 2006年以降の早期留学の動向についての情報収集は、当初予定していた留学経験者(留学生およびその親)や大学関係者だけでなく、中学校教員や留学斡旋業者に対しても聴き取り調査をおこなうことができた。今後、事例数を増やしたい。また、関連文献および新聞・雑誌記事については、大量にあることが判明したため、収集は順調に進んでいるが、分析には時間がかかる見込みである。 激増期の早期留学については、文献および新聞記事の収集・分析、インタビュー調査、インタビュー・データの分析を、おおむね予定通り進めることができた。文献および新聞・雑誌記事の収集は、次年度以降の安定・還流期についても、かなり進んでいる。ただし、データ分析については不充分な部分があるので、補完していきたい。 なお、本年度は、創成期および増加期の新聞記事の補完的分析もおこなった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従い、平成26年度には早期留学の現況についての情報収集と早期留学の安定・還流期のデータ収集・分析、平成27年度には1990年代から約20年間の早期留学をめぐる政治・経済・社会的条件の変化と早期留学生の増加への韓国社会の対応についての総合的分析をおこなう予定である。 資料収集やインタビュー調査は、実施予定の年度に縛られず、機会があれば積極的におこなっていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、日程の都合により外国出張の滞在期間が当初の予定よりやや短くなったこと、航空運賃が予定より安かったことにより生じたものである。 次年度の研究費と合わせ、以下のように使用する計画である。 物品費(韓国の政治・経済・社会・教育および早期留学関連図書の購入)20万円、旅費(韓国での資料収集およびインタビュー調査、国内関連学会・研究会への参加)50万円、謝金(新聞・雑誌記事の整理、録音テープ書き起こし、翻訳謝金など)23万円、その他(複写費など)1万5千円
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