2014 Fiscal Year Research-status Report
韓国における「早期留学」に関する研究―教育のグローバル化と韓国社会の変容―
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24510344
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
小林 和美 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (90273804)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 社会学 / 韓国 / 教育 / グローバル化 / 留学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、教育を目的とした国際人口移動である「早期留学」の研究を通して、韓国社会における教育のグローバル化の進展過程と韓国社会の変化をとらえようとするものである。3年度目である本年度は、早期留学の現況についての情報収集、早期留学の安定・還流期の検討、早期留学の激増期および安定・還流期における新聞報道の検討をおこなった。 1 早期留学の現況についての情報収集:早期留学生の親に対するインタビュー調査、初等学校での教育現況の視察、大学関係者へのヒアリング、京畿英語村の視察などから、韓国内で可能な教育と引き比べて早期留学の効果が厳しく吟味されるようになり、短期化・プログラム化が進んでいることが明らかになった。 2 早期留学の安定・還流期の検討:李明博政権期(2008年2月~2013年2月)の早期留学について、文献および新聞・雑誌記事の収集・分析、当時の留学状況についてのインタビュー調査、インタビュー・データの分析を行った。李明博政権が示した英語公教育強化政策により英語教育熱が高まったが、世界金融危機の影響により早期留学生数は大幅に減少し留学生の還流も増えたこと、早期留学の問題点やその効果に対する否定的認識が広がったこと、マスコミでの話題性が減少したこと、早期留学に代わる効果が得られる方法が注目されるようになったことなどが明らかになった。 3 早期留学の激増期および安定・還流期における新聞報道の検討:新聞記事の分析を通して、早期留学ブームが過熱し年月が経過するなかで早期留学の問題点やその効果に対する否定的認識が広がり、「管理型留学」や国際学校・外国人学校など韓国内で早期留学に代わる効果が得られる方法が注目されるようになったことを明らかにした論文「韓国における「早期留学」をめぐる新聞報道―2003年3月から2013年2月まで―」を執筆した(未発表)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、「早期留学」が子どもたちの人生設計における選択肢として現れる政治・経済・社会的条件と早期留学生の増加への韓国社会の対応を、個々の留学生が辿ったライフコースの事例と照らし合わせながら明らかにしようとするものである。そのため、平成26年度には、早期留学の現況についての情報収集、安定・還流期の早期留学についてのデータの収集・分析を行う計画であったが、おおむね計画通り進めることができた。 早期留学の現況については、早期留学生の母親に対するインタビュー調査、初等学校教員・大学関係者へのヒアリングに加えて、早期留学の抑制効果を期待された京畿英語村の視察を行い、情報収集をすることができた。今後、必要に応じて事例数を補足したい。韓国およびその他の国における早期留学の現況についての文献および新聞・雑誌記事の収集・分析はおおむね順調に進んでいる。 安定・還流期の早期留学については、文献および新聞記事の収集・分析、インタビュー調査、インタビュー・データの分析を、おおむね予定通り進めることができた。ただし、インタビュー・データの分析については不充分な部分があるので、補完したい。 また、本年度は、激増期の新聞記事の補完的分析もおこなった。 本年度までに、1990年から現在までの早期留学関連資料の収集と分析を、一通りおこなうことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従い、平成27年度には1990年代から現在までの約20年間について、早期留学をめぐる政治・経済・社会的条件の変化と早期留学生の増加への韓国社会の対応を整理し、総合的分析を行う予定である。 これまでに収集した資料を見直し、必要に応じで補足するとともに、資料やインタビュー調査データの解釈、まとめ方などについて、国内外の専門研究者と意見交換をおこなう。以上の作業をふまえて、報告書を作成する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は、日程の都合により外国出張の滞在期間が当初の予定より短くなったこと、航空運賃が予定より安かったことにより生じたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究費と合わせ、以下のように使用する計画である。 物品費(韓国の政治・経済・社会・教育および早期留学関連図書の購入)10万円、旅費(韓国での資料収集、国内関連学会・研究会への参加)20万円、謝金(資料整理、韓国語資料の翻訳など)20万円、その他(報告書印刷費、複写費など)31万円
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