2015 Fiscal Year Research-status Report
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24510346
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
西 佳代 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (90416058)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松島 泰勝 龍谷大学, 経済学部, 教授 (20349335)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | グアム / 基地内外格差 / 生活の質 / 資源管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、グアム島における米軍基地内外の生活の質の格差について、海軍省(1947年以降は国防総省)の天然資源管理策と関連づけながら考察してきた。 その結果、次の三点が明らかとなった。まず1898から1950年にかけて島を統治した海軍は、近代科学によって天然資源を管理する手法を採用したが、それに伴いチャモロ族の生活も近代的なものへと変貌した。たとえば上下水道の建設により、チャモロ族の生活は健康で衛生的なものへと変化したのである。このようにチャモロ族の生活のアメリカ化を推進しようとした「友愛的同化策」は、アメリカ人とチャモロ族の生活の質という観点からみれば、両者間の格差を縮小させようとする政策であったと評価できよう。 しかし1950年に成立したグアム基本法によって基地の境界線が画定されると、基地内は国防総省、基地外は内務省の管轄下におかれることとなった。その結果、天然資源は国防総省と内務省の管轄に二分され、これが基地内で暮らす米軍関係者と基地外で暮らすチャモロ族の間で生活の質の格差拡大を促す要因となった。水資源はその好例で、水源が基地内にしか存在していないことから、チャモロ族の生活の質は国防総省の意向によって左右されてきたのである。 しかし近年、生活の質をめぐる基地内外格差問題は、グアム島にアジア太平洋地域におけるハブとなる米軍基地を建設するという国家安全保障政策に影を落とす問題となっている。とりわけ対テロ戦争開始以後は、人員確保に悩む米軍においてグアム島出身の民間人がナショナル・ガードとして存在感を増していることから、今日では格差解消が連邦レベルにおける喫緊の政治的課題となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成27年度では、研究成果を書籍として出版する予定であった。しかし一身上の都合(高齢者の介護など)から、実現させることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果をまとめ、書籍として出版する。 ただし、冷戦期のグアムにおける国防の水資源管理策については、現在資料を収集中である。特に太平洋諸島で核実験が繰り返された1940年代から1960年代にかけて、フォールアウトによる水質汚染問題に対して、国防総省がどのように対応したのかがまだよくわからない。すでにアメリカの国立公文書記録管理局である程度の資料は収集しているが、まだ不十分である。 この点については、核実験に参加した海洋学者や生態学者の論文を手掛かりに、考察を進める予定である。本年度から始まる基盤研究(c)「1950年代アメリカ海軍のグアム島における風下被ばく調査に関する研究」の一環として、資料収集を継続的に行う。
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Causes of Carryover |
一身上の都合(高齢者介護)のため、研究活動を予定通り行うことができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究結果をまとめて書籍として出版する予定である。
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