2013 Fiscal Year Research-status Report
現代スペインにおける聖と俗:戦争犠牲者の記憶と祈念の諸相
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24510356
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
渡邊 千秋 青山学院大学, 国際政治経済学部, 教授 (00292459)
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Keywords | スペイン / 内戦 / 記念碑 / 国際旅団 / カトリック教会 / 世俗 / 宗教 / 国家 |
Research Abstract |
平成25年度は、平成24年度に引き続き、マドリード・コンプルテンセ大学構内に設置された、スペイン内戦で戦った国際旅団義勇兵を顕彰する記念碑に注目し、定点からの継続的なフィールドワークを実施した。一方、この記念碑を撤去させようとする勢力と、現在の場所に維持しようとする勢力との間のコンフリクトは年度内に新たな局面を迎え、法による決定を仰いでいる現状である。年代的にいっても、元義勇兵が他界したというニュースが増えていく中にあって、彼らをいかに記憶するかという忘却されかけた課題に対し、再度社会的議論の焦点があてられている状況にあるといえる。そういったコンフリクトの現状と解決へむけたプロセスについて、2013年の研究ノートに続く続編として、2014年1月発行の学部紀要に研究ノートを掲載した。 また、カトリック教会が現在まで保有する内戦関連の記念碑・建造物と世俗的・非宗教的な記念碑との比較を行うことができるよう、双方の記念碑に関する資料収集、フィールドワークを進めた。たとえば、アラゴン自治州内の人口500名ほどの村落で、現在どのように内戦が記念されているのか、オーラル・ヒストリーの手法を援用しながら調査するとともに、記念碑という「記憶の場」が具体的にはどこに設置されるのかを考察した。実際には、当該の村落の犠牲者たちの記念碑設置が、さまざまな理由によって周辺の村落にまで広がっていることが確認できた。 市井の人々の内戦の記憶は、時の政治的・社会的状況によって断続的に忘却と回復を繰り返していることが、内戦関連の記念碑の新たな設置や撤去をめぐる攻防によく表れているという実感を得ている。次年度へむけて、学会報告・論文執筆などのより具体的な成果を上げていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の段階で、申請時に研究資料としての使用を見込んでいた個人文書のアクセスが困難になったが、その代替として、別の文献資料へアクセスできる見込みとなったため、現在の進行状況はおおむね順調と判断する。また、成果を文書化し、発表しつつあることも判断の理由である。前述のアクセスが困難となっている文献に関しては、今後も、ご遺族との交渉を継続し、資料確保の可能性を探る所存である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は記念碑設置・撤去という「進行する」現状を記録するため、資料収集を継続しつつ、再度スペイン現地でのフィールドワークに入る予定である。そのうえで、得た資料を活用しつつ、国内外での学会報告・論文執筆に臨む予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
情報提供者に対して謝金等を予定していたが、平成25年度は謝金支払予定だった先方がこれを辞退された。また書籍購入に関しても翌年度送りとなっている。 平成26年度は、現地調査・報告旅費、図書費などの使用を見込んでいる。学会報告など、成果実績を公開するために予算を有益に使用したいと考える。
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Research Products
(4 results)