2015 Fiscal Year Annual Research Report
現代スペインにおける聖と俗:戦争犠牲者の記憶と祈念の諸相
Project/Area Number |
24510356
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
渡邊 千秋 青山学院大学, 国際政治経済学部, 教授 (00292459)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | スペイン / 内戦 / 記念碑 / 集合記憶 / 国際旅団 / 世俗 / 宗教 / カトリック教会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終年度にあたる2015年度は、マドリードのカルロス3世大学で2015年10月末に開催された「ある戦争のイメージ:1936-39年のスペインにおけるポスター・写真・映画」国際大会において報告を行った。とくにこの大会への参加を通じて、現代スペインにおける表象イメージ研究の気鋭の研究者たちと知り合い、国際的なネットワークを広げることができたことは、今後も研究を深め、進めるうえで大きな励みとなった。マドリードにおいては「歴史的記憶法」の適用をめぐり、今なお残存するフランコ体制を称揚する記念碑等を撤去しようとする政治勢力とその維持を試みる政治勢力とのあいだのコンフリクトが起きている。たとえば、この間にマドリードにある私営の墓地からフランコ体制を称揚するものだという理由でプレートが撤去されたが、その直後に教会側のクレームで元の位置にもどされる、など、状況は混乱している。また、共和国陣営を表象する国際旅団記念碑は、まさに政治的闘争の矢面にたち、落書きなどが後を絶たない状況にある。現場での緊張状態をうけてか、マドリード・コンプルテンセ大学に設置された国際旅団記念碑を維持するのか、もしくは撤去するのかをめぐっていまだ議論が継続し、膠着状態にある。2015年度は、このようなスペイン内戦における犠牲者の記憶をめぐる攻防について、学会での報告はもとより、本研究機関を通じておこなってきた経過観察・インタビュー等をまとめる作業に従事した。 フランコの霊廟である「戦没者の谷」をどうするのかという議論・処置が帰結点を見出していない現状からいっても、現代スペインが内戦と独裁の記憶をいかに次世代に継承するかという問いにいまだ明確な答えを見出していない状況にあることが、本研究を推進するうえで明らかになった。今後も事項の推移を見守り、将来的には日本等のケースとの比較研究に活かしたいと考える。
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