2015 Fiscal Year Research-status Report
創造された伝統としてのイギリス文化の価値に関する理論的・実証的研究
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24510358
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
渡辺 愛子 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (10345077)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 地域研究(イギリス) / 文化史 / ヘリテージ研究 / 文化経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、現代において改編・消費・再生産される「伝統的」イギリス文化に付加された諸価値を見出し、そこにどのような「イギリス性(イギリス的特性・イギリスらしさ)」が表象されているかを解釈することによって、現代イギリス社会が包含する特異性を解明しようという試みである。 4年目を迎えた平成27年度は、「文化の海外投影――他者の目から見た伝統的イギリス文化のかたち」をテーマに、日本におけるイギリスのイメージがいかなるものかを解明することを目的とした。その手段として、本研究課題採択の1年目より「イギリス・イメージ調査」というウェブサイトを立ち上げ、募ってきたアンケートへ回答を利用した。現在もアンケート回収は進行中であるが、今回はこれまでの調査結果の概要をもとに分析手法に関する問題点や調査そのものから見えてきた課題を提示し、必要であれば方向修正を行って最終報告書に生かすべく、中間報告を執筆した。 集計結果から見えてきたいくつかの特徴は、日本におけるイギリスへのイメージは、たとえばブリティッシュ・カウンシル(The British Council) が1999年と2000年に行った‘Through Other Eyes’(以下、TOEと略記) および2014年の‘As Others See Us’ と大きく異なるものではなかったものの、一昔前と比べて「多文化社会」としてのイギリスのイメージが浸透してきたようである。また、調査中とくに興味深かったことは、イメージの抱き方というものは一元的なものではなく、大まかに分けて「醸成されてきたイメージ」と「事件や契機がもたらすイメージ」の相対するかたちが存在するということであった。本調査を行う際、時勢やトレンドに大きく左右される、このように可変的で不安定なイメージの解釈にはつねに注意を払っていかなければならないことを痛感した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今回は中間報告という性格上、調査の全容を提示することができなかったばかりでなく、紙面の都合上、大まかな論点を示すのみにとどまった。また、質問と回答それぞれの項目を整理して感じたのは、サンプル数の増加と対象年齢層の均等化を目指す必要性である。さらに、目下開設中の本ウェブサイトへのアクセス数がいまだきわめて限定的であるといった問題点を踏まえ、「やや遅れている」という達成度評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
イメージ調査については、残りの研究期間において、あらゆる人的ネットワークを駆使してサイトの周知を図ることで、有効回答数を増やしていきたい。本調査の最終目的は、イギリスの対外文化政策がイメージ調査をどのように活用し自国のイメージ向上に役立てていったのか、その戦略と成果を探ることである。情報のソースがますます多様化・複雑化するなか、イメージのような抽象的でつかみどころのないものからヒントを得、実体のともなった政策を立案することには多くの困難がともなうことが予想されるが、「ソフト・パワー」の有効性が満を持して顕在化しはじめた21世紀の現在、本調査を継続することで、そうした難題になんらかの解答を見出していきたい。
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Causes of Carryover |
入手を希望していた文献が、在庫切れであったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまでに大方の一次資料は入手できたことから、平成28年度は、経費のかさむ夏季には海外出張をせず、この期間はこれまでの文献整理と執筆作業に充てる。そのなかでさらに必要と判断された資料については冬季の海外出張で入手することになるだろう。今回も、大英図書館、公文書館を中心に、効率的かつ集中的な資料収集に努めたい。その他のおもな使途は、国内における研究打ち合わせや研究図書・消耗品購入である。
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Research Products
(2 results)