2016 Fiscal Year Annual Research Report
Theoretical and Empirical Approaches to Cultural Values Attached to British Culture as an 'Invented Tradition'
Project/Area Number |
24510358
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
渡辺 愛子 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (10345077)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 地域研究(イギリス) / 文化史 / ヘリテージ研究 / 文化経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
<研究実績の概要> 本研究課題は、現代において改編・消費・再生産される「伝統的」イギリス文化に付加された諸価値を見出し、そこにどのような「イギリス性(イギリス的特性・イギリスらしさ)」が表象されているかを解釈することによって、現代イギリス社会が包含する特異性を解明しようという試みである。 まず、日本におけるイギリスのイメージがいかなるものかを考察する作業については、2017年3月まで当該ウェブサイトを開設し、最終報告書を執筆すべくデータを解析中である。今回は、前回の中間報告で省略したイギリス連合国内における国/地域の差異について、他者がどれほどの認識を持っているのかなど、多種多様な問いを多角的に分析する必要があることから、慎重な作業を行っている。また、前回の中間報告からわかった「イメージの抱き方」の多重性については、今回も重要なポイントとして考究中である。これは「醸成されてきたイメージ」と「事件や契機がもたらすイメージ」の共存状況のことを意味しているが、時勢やトレンドに大きく左右される後者のイメージについては、それがいかにして個人のなかで主要なイメージ、あるいは「偏見」へと変容していくのかに注目しながら、最終報告書を完成させる予定である。 「創られた伝統」という本研究課題のテーマについてここ数年研究を進めるうち、イギリスに古くから根付く階級制度が「創られた伝統」としての階級意識を再生産していくことに改めて気づかされた。そこから逆説的に見えてくるのは、そうした固定観念から零れ落ちてくる新たな階層意識といえる「ミドルブラウ」層の存在である。ミドルブラウ研究は近年やっと注目されるにいたった新たな分野であるが、本研究課題を通じてこの研究に向き合うことができたのは大きな収穫であった。
|
Remarks |
現在解析・執筆中の「イギリス・イメージ調査最終報告」は、学術雑誌・大学紀要が指定するページ数を大幅に超過する予定のため、大学設置の個人ページに、PDFファイルとして掲載予定である。
|
Research Products
(2 results)