2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24510360
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
横井 和彦 同志社大学, 経済学部, 准教授 (80351279)
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Keywords | 改革・開放 / 国有企業改革 / 対外開放 / 北京コンセンサス / 中国模式 / 国家資本主義 |
Research Abstract |
「中国における『改革・開放』の再検討―『国進民退』の評価にむけて―」を『経済学論叢』(同志社大学経済学会)第65巻第4号、2014年3月に発表した。 まず中国の経済発展が、1978年から鄧小平によって進められた「改革・開放」の成果であることには異論がないにもかかわらず、その結果である現状、すなわち「国進民退」の評価については議論が大きく分かれていることに注目した。その1つは先進資本主義国とは異なる発展の道であり、ほかの発展途上国にも適用可能な開発モデルとして高く評価する「北京コンセンサス」や「中国模式(モデル)」とよばれる議論であり、もう1つは政府が政治的利益の追求によって産業の重要な部分を支配している「国家資本主義」であって先進資本主義国とは相いれない特異な体制と断じる議論である。 そこで本稿では「改革・開放」を象徴する対外開放と国有企業改革を再検討することをつうじて、「国進民退」がむしろ「改革・開放」がめざしたものであることを明らかにしたうえで、とりわけ「国家資本主義」論に対しては「改革・開放」の歴史と中国経済史上の「国家資本主義」についての理解をふまえる必要があることを示唆した。同時に、「国進民退」が「改革・開放」の結果であったとしても、目標が達成されているかどうかについては検討する必要があることも強調した。すなわち経済において公有制が主体であるということで社会主義の根拠となるかどうかについては議論が必要であり、所得格差や市場経済化もあいまって貧富の格差が確実に拡大する一方で共産党・企業幹部の腐敗もあいつぎ表面化していることを見逃してはならないのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「国進民退」とよばれる中国のマクロ経済の状況とその評価について、「中国における『改革・開放』の再検討―『国進民退』の評価にむけて―」『経済学論叢』(同志社大学経済学会)第65巻第4号、2014年3月にまとめることができたから。 また中国における都市「単位」社会の変容についても、「社区建設」にかんする日本語・中国語文献について検討を始め、次年度には現地調査も予定されているから。
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Strategy for Future Research Activity |
「国進民退」とよばれるほど「好調」な業績をあげている国有企業の分配(賃金・福利厚生など)について、マクロ的調査および個別的調査を進める。 中国における社区の現状について文献検討をするとともに、実地調査を実施する。その際には現在の中国の建国以前から工業地帯であり、「職住一体」とはなっていない上海市における社区と、建国後旧ソ連からの援助によって建設された「第一汽車(自動車)」の企業城下町である吉林省長春市における社区を中心に調査する。また当初の計画にはなかった、上海とよく似た経緯を持つ山東省青島市における社区についても調査する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
適切に執行した結果、小額の残高が生じた。 残高は、物品費(中国における企業改革にかんする文献・統計年鑑、中国経済・国際経済にかんする学術雑誌)等に執行する。
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