2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24510360
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
横井 和彦 同志社大学, 経済学部, 教授 (80351279)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 中国 / 国進民退 / 単位 / 社区 / 社会保障制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
今日の中国経済が、国有企業の業績が躍進する一方で、民間企業の発展が圧迫されるという「国進民退」とよばれるような国有経済(企業)を中心とする経済体制となるにいたった原因を、企業改革に応じて次々に実施された外資導入政策の展開と、国有企業の株式会社化の過程、国有経済の戦略的調整、非流通株の市場運用を中心とした国有企業改革の進展から検証した。 さらに、国有企業が、政府が果たすべき社会保障の役割までをも担うという「単位」社会の変容については、日本の企業内「共同体」の変遷と比較研究することによって浮かび上がらせた。労働者(家計)の生活・雇用・老後等に対する不安とリスクを軽減するうえで国家(政府)によるセイフティー・ネットを含む所得再分配政策と市場機能(企業)をどのように役割分担させるかについて初歩的な結論を得た。 近年、中国では「和諧社会」(調和のとれた社会)の実現をめざして、政府による社会保障の充実がはかられている。福利厚生費用、とりわけ法定福利費用の高さから、政府による社会保障の制度化が進んでいるといえる。また、「単位」として企業が果たしてきた役割は、地域社会・コミュニティーである「社区」に移管しつつある。とりわけ企業の退職者にかんする業務の移管が進んでいる。 企業社会の変化とそれに伴う労働関係のあり方は、注視しなければならない課題である。企業による保障の後退と政府による社会保障の制度化のつぎの問題(社会化・商業化)、「社区」の役割・実態についてのさらなる調査・研究は、今後の課題としたい。
|