2012 Fiscal Year Research-status Report
1970年代タイ農民運動の農村における実態に関する研究
Project/Area Number |
24510365
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
重冨 真一 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, その他部局等, その他 (00450461)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | タイ |
Research Abstract |
本研究は、1970年代のタイにおいて展開した農民運動の実態を把握することを目的としている。この時期の農民運動は、民主化を求める学生運動と共に、よく知られた現象であるが、農民運動全体の動きについては分析があるものの、農村レベルでどのような問題があり、どのような運動が展開されたのかは研究されていない。4年間の研究の初年度である2012年度は、農民運動が活発に展開され、しかも当時の農民運動活動家とのコンタクトが現時点でもかなりのていど可能な北部(チェンマイなど北部上部)を中心に、当時の農民活動家や農民を支援した学生活動家に会って、話を聞いた。 今年度の調査でわかったことは、同じく北部上部に限っても農民運動の起き方はいくつかのパターンがあるということである。それは村の抱える問題の違いから来るものであった。たとえば、ランパーン県のある村では、鉱山の排液問題で農民が立ち上がり、そこに学生が支援に入るというかたちであった。ランプーンのある村の場合は、北部地方王族末裔の地主との対立がきっかけであった。チェンマイ県で聞き取った農村では、都市部の資本家的不在地主との対決であり、王族や資本家ではない中小の地主から土地を借りている農民は、地主との直接的な対決という形の運動ではなかった。大まかにいうと、平地では地代問題、山間地では土地の権利を巡る政府や有力者との対立というのが、構図だったようだ。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、H24年度は調査対象者のリスト作りと文献調査を中心に進めるつもりであった。北部タイについて調査対象者のリストができたため、そのリストに上がった人をH12年度中に訪問して、さらに調査対象者を紹介してもらうことにした。こうした聞き取り調査に時間がとられたため、逆に文献調査の方は時間がほとんどとれなかった。聞き取り調査は予定よりも進んだが、文献調査の方は予定通りには行かなかったというのが初年度の状況である。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度に文献調査が十分できなかったので、それをH25年度におこないたい。またH24年度の現地調査で、今後の調査の課題がいくつかあきらかになった。まず北部地方については、農民への聞き取りの限界である。農民は自分の村での出来事については騙ることができるが、地方全体としてどういう傾向があったかについては全体像をつかんでいない。農民運動のあった村は数多いので、どういうタイプの村を調査村として選べば良いかは、まず地方での全体像をつかんでからわかることである。H25年度は、もと学生活動家からも積極的に聞き取りをおこなう必要がある。 次に中部地方については、当時の農民活動家はもちろん、学生活動家についてもフォローがかなり困難であることがわかった。何人か名前の挙がっていた当時の活動家を訪ねてみたり、紹介をうけたりしたが、聞いてみると運動の現場にはあまりいなかった人であったり、インタビューを拒否する人もいた。いまのところどのように聞き取り対象者を特定していけば良いか、展望が見えない。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
中部地方の調査対象者のリストアップを請け負ってくれる人への謝金として、10万円を見込んでいる。 現地調査の旅費として40万円を見込んでいる。 ただし、中部地方での調査対象者をリストアップできる人物が見つかるかどうかわからないので、それが難しい場合は現地調査の期間を延長するなどして対応する。その場合は、旅費に50万円を見込む。
|