2012 Fiscal Year Research-status Report
近代日本の男性性構築におけるミソジニー・ホモソーシャル・ホモフォビア
Project/Area Number |
24510369
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
海妻 径子 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (10422065)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 男性史 / 日本史 |
Research Abstract |
大正期から昭和初期にかけての都市中間層に関する先行研究においても、看過されがちであった、「家庭」以外の場における俸給生活者男性のありように着目し、その男性性をめぐる言説を収集・分析するのが、本研究の目的である。 この本研究の初年度にあたる、平成24 年度においては、都市俸給生活者男性についての先行研究および一次資料の収集を、最大の課題とした。今年度の成果として特記すべきこととしては、社会民衆党および社会大衆党などの社会主義右派政党や俸給生活者組合などの団体の活動について、当時の社会運動の状況について幅広く伝えたメディア『社会運動通信』における報道を分析し、その動向を編年式にまとめた点にある。都市俸給生活者に関する先行研究は、もっぱら近代家族論として展開されており、他方で都市生活者男性の「家庭」以外の領域に関する先行研究は、ブルーカラー労働者層がもっぱら対象となってきた。したがって本研究が対象とする俸給生活者男性の「家庭」以外の場におけるありようについては、そもそも体系的な一次資料の収集およびその整理分析が行われて来なかったと言ってよい。本研究において今年度行った作業は、この欠如を埋める重要なものといえる。 また、ミソジニーやホモソーシャル、ホモフォビアについてのフェミニズム・ジェンダー・クィア研究およびそれを用いた男性性研究の最近の知見を取り入れるべく、文献を収集し、理論整理をおこなった。文献については、電子ジャーナル等を利用して海外文献を収集した他、ホモソーシャル理論を深化させる上で重要な研究動向として、ネオ・グラムシアン政治学、レギュラシオン理論、ポスト・マルクス主義(ラディカル・デモクラシー)に関する文献も、あわせて収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の資料収集の目標は、社会民衆党および社会大衆党などの社会主義右派政党や俸給生活者組合などの団体の活動動向の概要をまとめるだけでなく、それらの団体の機関誌や新聞報道などの具体的言説を、収集・分析することにまで置いていた。「研究実績の動向」に記したように、活動動向を編年式にとりまとめたこと自体は、十分に意義ある達成を得られたと言えるものの、この作業にやや時間・労力を取られ過ぎてしまい、目標としていた具体的言説の収集・分析までには作業を進めることができなかったのは否めない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の前半までは資料収集および海外文献を用いた理論研究の期間と位置付ける。したがって平成25年度においても、引き続き資料収集および海外文献を用いた理論研究を行うが、都市俸給生活者男性の資料収集は平成25年度いっぱいを目安とし、それ以降は対抗的男性性が示されているものとしての、工場労働者および植民地開拓事業参加者の男性性言説の収集に重心を移す。平成25年においては『労働調査報告』(大阪市史料調査会)や『俸給生活者・職工・生計調査報告』(協調会)などの資料を入手・分析し、都市俸給生活者をめぐる言説を中心に分析を行うことと並行しながら、翌年以降の工場労働者をめぐる男性性言説の資料の所在について予備的に調査する。 平成25年度においては、研究補助者を積極的に活用し、効率良い作業の展開をめざしていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
購入図書の取り寄せ等に時間がかかるなどし、残金82円が生じた。来年度は左の額と合わせた助成金について、引き続き男性性言説資料の収集に使用していく。平成24年度は研究補助者の活用はしなかったため、これを作業の遅れの一因ともとらえ、研究費を補助者への謝金に振り向けていくことで、遅滞ない研究の進行をめざしていく。
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