2013 Fiscal Year Research-status Report
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24510370
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
金井 郁 埼玉大学, 経済学部, 准教授 (70511442)
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Keywords | ジェンダー / 生命保険 / 雇用 / 個人請負 / 雇用システム / 国際比較 |
Research Abstract |
本研究の目的は従来の日本の雇用システム研究の対象とされてこなかった女性、非正規、専門職の労働者について雇用ルールを解明する実証研究を行い、それらの労働者を含めて理論化することである。今年度は昨年度から実施している日韓生命保険会社の営業職員について引き続き聞き取り調査を進め、結果の一部を国際学会や国際ワークショップ、投稿論文としてまとめた。 日本の伝統的生命保険会社における営業職員は、「正社員」と呼ばれるものの、日本の雇用システムにおけるいわゆる正社員とは大きく異なる。採用システムは新卒中心ではなく中途採用中心で、リクルートシステムも女性営業職員たちのネットワークを活用している。中途採用にもかかわらず、職業経験は問われず、人柄や外見が重視される。雇用保障は成績に依存しており、実質的には保障されないに等しい。教育・育成制度も、総合職と比べると非常に短く、十分とはいえない育成システムの中で査定が行われ、成績がクリアできないものは離職せざるを得ない労働条件となっている。報酬制度も育成期間は保障給割合が高くなる会社も近年ではあるが、基本的には一定期間を過ぎたら固定給は少額となり、歩合給部分のウェートがより高くなる。営業職員の報酬格差は大きく全体的には収入分布は下位層に偏っている。社会保険加入は出来るものの、税制上の扱いは個人事業主となる。こうした特徴は、正社員という以前に、雇用ではなく個人事業主の性格も併せ持つものである。日韓での比較および内勤正社員との比較からは、労働そのものの性格や内容がその労働の社会的価値を決めるのではなく、労働を遂行する人が女性なのか男性なのか、また、女性がする労働についての社会的意味づけが、彼女らの労働の地位や「生活保障されるべき労働者」の範疇を決めているといえる。引き続き、「雇用」の性格がいかにジェンダー化されて構築されるのかを検討し理論化につなげる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、日本の雇用管理区分とジェンダー関係についての検討を文献研究から行い論文として報告した。 また、日本における伝統的生命保険会社における女性営業職員と外資系生命保険会社における男女営業職員に関する調査および文献研究を進めている。調査および文献研究の結果を一部、国内での学会発表、国際学会、国際ワークショップでの報告のほか、投稿論文や論文にて研究成果を出すことができた。 最終的にジェンダーの視点から日本の雇用システムの理論構築に取り組むことが本研究課題であるが、生命保険会社における営業職員を取り上げ、調査研究することは「雇用」と「ジェンダー」を検討する上で大変有用であることが、調査を通して明確化されてきた。 以上、研究はおおむね順調に推移し、成果も順調に出すことが出来ていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、日本における伝統的生命保険会社における女性営業職員と外資系生命保険会社における男女営業職員に関する調査および文献研究を進め、今までの調査及び文献研究結果をもとに「雇用関係とジェンダー」に関する理論構築を行い、学会発表及び論文執筆で成果を公表していく。 また、ドイツに在外研究中であるため、ドイツにおける雇用とジェンダーに関する文献研究および若干の調査研究も進めている。今後、ドイツにおける雇用とジェンダーを検討するための調査を行い、国際比較の視点を付加しながら、ジェンダー視点からの日本の雇用システムの理論構築を行う方針である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
9月より在外研究でドイツに滞在し、こちらで使用するPCやプリンタなどの物品費を考えていたが、受け入れ大学により準備してもらったため不要となったことと、ドイツでの調査を行う予定であったが、2013年度はコネクションを作るだけで調査の実施にはいたらなかったため。 ドイツでの生命保険会社のセールスパーソンに調査を行うこととなり、調査旅費等への支出およびドイツ語から英語への通訳を大学院生に依頼することにしたため、通訳謝金等に使用する。
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Research Products
(6 results)