2014 Fiscal Year Research-status Report
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24510370
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
金井 郁 埼玉大学, 経済学部, 准教授 (70511442)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ジェンダー / 生命保険 / 雇用 / 個人請負 / 雇用システム / 国際比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、従来の日本の雇用システム研究の対象とされてこなかった女性、非正規、専門職の労働者について雇用ルールを解明する実証研究を行い、それらの労働者を含めて日本の雇用システムの理論化を行うことである。今年度は引き続き生命保険会社の営業職員についての聞き取り調査を日本とドイツで行い、成果の一部を国際学会および論文としてまとめた。 雇用と自営2つの性格を持つ日本の生命保険の営業職員を事例に、雇用とは何か、ジェンダーとの関わりについて理論的考察を試みた。生命保険営業は会社による指導・管理はあるものの、特に顧客との人間関係を構築する際、販売も顧客管理も営業職員の個人の資質に依存する部分が大きい。こうした営業職員の個性に依存した営業は、会社にとって仕事のやり方を管理・監督できない部分が大きいことを意味する。会社のコントロールできないリスクやコストを軽減・回避するには、歩合給や成績に依存した雇用保障など営業職員自身がリスクを負担する「自営」的性格を残すことが効率的といえる。顧客の多様性、その多様な顧客の多様なニーズを前提とした場合、どのようなタイプの営業職員が生命保険営業として成功するのかは、実際にやってみないと分からないというものであった。そこで大量の労働者を採用し雇用することが、成功する人の比率を高めることにつながり、成績次第で雇用を保障せず営業成績が悪い者の離職を促すといった大量離職も会社にとってはむしろ効率的である。特定の学歴や経験を必要とせず、大量の労働力を採用コストをかけずに供給出来る人材プールは女性(主婦)であり、安定的な雇用や主たる家計維持者としての生活賃金が保障されない働き方を大量に引き受けることが出来たのも女性(主婦)であった。日本の生命保険会社の営業方法においては、自営と雇用の両側面を持つ大量の女性販売職員を用いることが効率的な仕組みとして構築されてきたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
雇用と自営の2つの性格を持ち合わせる日本の生命保険の営業職員を事例に、雇用とは何か、いかにジェンダー化されるのかを理論的に検討した論文を執筆し、国際学会での報告を行っている。今後は、こうした雇用のあり方の歴史的な形成過程を生命保険の営業職を事例に明らかにすることで、雇用関係の形成に対するジェンダーのインパクトを検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
歴史的な形成過程、男性営業職員を主体とした外資系生命保険会社との比較については、調査・文献研究は進めているので、来年度成果として学会報告(国際学会、国内学会)、論文執筆を行う予定である。 最終年度であるため、日本的雇用システム研究に対する批判的検討および理論化も行う。
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Causes of Carryover |
在外研究で滞在していたドイツから日本での調査を複数回行い、国際学会での発表を行ったため計画以上に費用がかかると考え、学内の女性研究者に対する助成金を応募したところ30万円を獲得でき、そちらで国際学会参加の渡航費等費用が賄えたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度、ドイツで開かれる国際学会での報告及び日本国内での学会報告を申請し承認されたため、その費用とする。
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Research Products
(4 results)