2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24510378
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
青山 薫 神戸大学, その他の研究科, 准教授 (70536581)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | セックスワーク |
Research Abstract |
本研究は、外国人をふくむ日本の性産業で働く人びとの法的、社会的処遇および労働条件が、当事者の安全と人権にどのように影響しているかを明らかにし、「性産業で働く人の安全と人権の保護」と「人身取引の被害者救済と加害者処罰」の間にある矛盾を克服し、社会的疎外を受ける人びとを真に支持するために何が必要かを検討する。 申請者は、性産業で働く人びとの安全と人権を確立するために必要なのは、調査結果ではなく、現場での相談活動を中心とするアウトリーチそのものだと考え、現場で当事者自身が当事者に情報をもたらす、「ピアエデュケーション」が歓迎されることに注目している。 24年度は、研究調査計画の基礎に研究協力者であり当事者団体であるSWASHおよび申請者によるアウトリーチをおき、その記録をつけ、これを分析の対象とした。その際には、TAMPEP(移住性労働者のHIV/STI予防と健康増進のための欧州ネットワーク)がEUの助成を受けて実施した、外国人と本国人性労働者の業態別地域分布調査のためのチェックシートを応用した。これによって、録音やアンケートなどの記録を拒否しがちな非正規・脱法状態でいる人が多い外国人性労働者についても、アウトリーチが許される範囲で、社会的処遇、労働条件、人身取引禁止動向の影響の一端があきらかになった。個々のライフストーリの聞き取りをすることはできなかったが、SWASHが行っている他の調査活動とも連携し、札幌、東京、大阪、福岡といった多様な現場で、当事者・支援者・性風俗店経営者などと会合をもつことができ、今後の調査およびアウトリーチ活動につながる関係を得た。 また、申請者の英国出張では、2003年、2009年の関係法改正によって当事者に影響をあたえ研究者の耳目を集めてきた、英国における近年の性産業対策の変遷とその社会的評価に関する資料を収集した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記「研究実績の概要」に示したとおり、24年度の計画は本研究の目的と方法論に照らして、間違った方向へは進んでいない。 アウトリーチの記録は合計12か所分になり、日本人女性セックスワーカー(SW)、外国人女性SW、トランスジェンダーSWの人びとがそれぞれ抱えている問題の特色をつかむ糸口ができた。また、東京新宿と札幌すすきのでは、当初計画していなかった経営者団体との接触を得て、非正規・脱法状態の弱年齢層や外国人に対する取り締まりに、「健全な風俗」をめざす経営者側の活動が影響している可能性も垣間見ることができた。 しかしながら、アウトリーチ対象者の人数が少なく、記録の質にもばらつきがあり、TAMPEPのような地域分布調査を行うまでにはいたっていない。また、そもそも本研究が明らかにすべき性産業で働く人びとの法的、社会的処遇、労働条件、これらと人身取引禁止動向関係についても、散漫な情報を得るにとどまっている。調査の性質上、統計的に優位な数量調査をすることは予定していないが、数多くのエビデンスが得られなくても質的には詳細なそれをめざす必要がある。 国際比較の面でも、当初予定したスウェーデン、ドイツ、韓国、タイ、オーストラリアについては文献情報を得るにとどまっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の第一の課題としては、先に述べたアウトリーチ対象者数を増やすとともに、記録の質の改善を中心に、より詳細な情報を得ることがあげられる。そのためには、研究協力者との打ち合わせをより密にし、申請者本人がアウトリーチに赴く回数も増やす必要がある。第二の課題としては、国際比較について対象を絞りつつも(現状では、すでに着手した英国、次年度に当事者団体との会合見通しが立っているオーストラリアおよびタイを考慮)、目標の国際会議等に参加して各国の当事者調査・活動とのネットワークを図ることことを充実させていく必要がある。 また、申請段階で計画したとおり経過報告の機会を設ける予定であるが、その際には、当事者の参加を得、建設的なフィードバックをもらうために、文字による発表や学会報告以外のイベントを企画・実施していきたい。 さらに、本研究における当事者参加行動調査という特徴から、研究協力者との関係に依存して調査をすすめることにかんする調査方法論を、並行して考察していきたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
|
Research Products
(7 results)
-
-
-
-
-
-
-
[Book] 有斐閣2013
Author(s)
千田有紀、中西祐子、青山薫編著
Total Pages
233
Publisher
『ジェンダー論をつかむ』