2012 Fiscal Year Research-status Report
同性ケアとその根拠:レズビアンとケア提供者の相互作用からみた安全概念の検討
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24510382
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe City College of Nursing |
Principal Investigator |
藤井 ひろみ 神戸市看護大学, 看護学部, 准教授 (50453147)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | クィア理論 / 性的指向 / レズビアン / ケアの安全性 |
Research Abstract |
本研究は「同性ケア」の安全性の概念を、クィア理論を用いて再検討することを目的とし、異性愛以外の性的指向をもつクライエント、特にレズビアンに着目し、クライエントと同性である女性のケア提供者との相互作用過程において、どのような構成要素がクライエントの「安全」を成り立たせているのかを、明らかにしようとするものである。 本年度はまず、クライエントを募るフィールドとして、欧米とアジア圏内のクィアスタディーズ研究者およびレズビアン支援団体の活動家らとのネットワークを構築した。具体的には、米国NCLR(National Center for Lesbian Right)、サンフランシスコ州立大学ジェンダー研究会、英国National LGBT Summit、ILGA-Asiaに参加し、研究者の本テーマに関わる先行研究の結果を公表・紹介し、各国研究者・実践家からのフィードバックを得た。その結果、米国、英国、そしてタイ、ベトナム、台湾、中国、フィリピンの研究者・実践家から、研究協力を得られる体制を作ることができた。今後は、これらの国において研究対象者にアプローチする段階へと、研究計画を進める予定である。 次に、クライエント側の因子とケア提供者側の因子について、国内外の先行研究の検討をおこなった。特に日本におけるレズビアンの医療ニーズとして、出産に関する結果をまとめ、国内学会で発表した(日本助産学会,2013)。今後は、本研究の主要概念である「安全」概念に関する先行研究の結果をまとめることが、課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の初年度である平成24年度は、研究対象者を募る地域のフィールドワークと文献検討・研究ネットワークの構築強化を計画し、ほぼ達成できた。 まずフィールドワークは米国(サンフランシスコ)と英国の2カ国を欧米圏(英語圏)として選択し、またアジア内ではタイでのフィールドワークを行い、アジア各国(タイ・ベトナム・台湾・香港)の都市部に活動拠点とネットワークを既に持つ研究者やNGO職員とのネットワークを強化した。また世界的規模でネットワークを構築するILGA活動の大会に参加し、本研究の先行研究に関してプレゼンテーションを行った。これにより各国NGO代表者から研究へのフィードバックが得られ、今後の研究計画に若干のpositiveな修正を加えることができた。 文献検討は、その結果の一部を国内学会で発表する準備を進めた(平成25年5月に発表)。 以上により、研究計画はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画2年目にあたる平成25年度は、国内各地域のフィールドにおいて研究対象者をリクルートし、インタビュー調査を開始する。また国外においてもインタビュー調査を実施するために、インタビューの2カ国語対応を可能とするため、和文インタビューガイドをもとにした英文ガイドを作成する。フィールドとしては、米国サンフランシスコとタイ・バンコクを最初とする。対象者への調査にあたっては、研究倫理に関して研究者が所属する倫理委員会の審査を経て実施する。また、英文ガイドの作成および、調査協力の手続きについては、米国およびタイにおいて、各国の状況とともに日本のクィア研究についても知識の深い研究者・実践家に意見を聞き、進める。具体的には、サンフランシスコ州立大学Amy Sueyoshi氏、タイのNGO代表Anjana Suvarnananda氏からスーパーバイザーとして協力を得る。国内においては、既に研究者が2007年から2011年に実施したインタビュー調査の先行研究結果をもとに、インタビューガイドを作成し、インタビューを行う予定である。 また本テーマをめぐる研究領域は近年、研究発表が活発化しており、最先端の研究における考察を取り入れるため、先行研究の検討は引き続き随時行っていく。特に「安全」概念の検討は、クィスタディーズのみならず、障がい学、看護学など学際的に追究していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用に関しては、既に(平成25年3月28日~4月1日)実施したタイでのフィールドワークとその後の文献検討、およびその成果の発表のために用いることとし、計112,361円である。4、5月は、平成24年度の諸外国で行ったフィールドワークの英文資料等の校正費も発生する予定である。 以降次年度の研究費は、月毎の研究事務スタッフ謝金(42万円)に加え文献費(20万)の他に、①国内外での調査旅費(48万円)、②調査中のインターネット環境の安全性確保ためのモバイル設備料(24万円)、および③調査中間報告書(英文)の校正料(10万円)を主な使途として計画している。
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Research Products
(4 results)