2012 Fiscal Year Research-status Report
ソーシャル・キャピタルが女性の政治参画、ジェンダー関連政策に及ぼす影響
Project/Area Number |
24510384
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
大山 七穂 東海大学, 文学部, 教授 (00213893)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ソーシャル・キャピタル / ジェンダー / 女性の政治参画 |
Research Abstract |
3年計画の初年度の研究として、まずはソーシャル・キャピタルに関する主要な文献を整理した。ソーシャル・キャピタルに関する文献は国内外ともに数多くのものが刊行されているが、ジェンダーとの関連性に焦点を当てたものは少なく、国内の文献としては皆無といってよい。そこで、Gender and Social Capital, Diverse Communities : The problem with social capital の2冊を精読し、ジェンダーの視点から見たソーシャル・キャピタル研究の問題点をまとめた(前者については『国際ジェンダー学会誌』の「外国文献紹介」に投稿した)。 その上で、神奈川県の33市町村におけるソーシャル・キャピタルと女性の政治参画の関連性を検討するために、諸データを収集した。女性の政治参画の指標として、(財)市川房枝記念会で4年おきに実施している地方議会議員調査データをもとに、1990年以降の神奈川県の市町村における女性議員比率や女性議員の属性の変遷をまとめた。また、ソーシャル・キャピタルが地方政府の統治パフォーマンスを高めうるかを検討した坂本治也(2010)の研究を参照しながら、ソーシャル・キャピタルとともに地域社会の制度的要因、財政的要因、政治的要因、社会経済的要因の指標となるようなデータを神奈川県の『県勢要覧』や『民力』(朝日新聞社)から抽出した。そして、市町村のソーシャル・キャピタルと女性の政治参画に関連が見られるかどうかを量的に分析した。 現在のところ、幾つかの個別指標と女性の政治参画との関連はみられるものの、ソーシャル・キャピタルが女性の政治参画に直接的に影響を及ぼすような結果は確認されていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「やや遅れている」とした理由は、ソーシャル・キャピタルと女性の政治参画に関わる諸データを収集し、とりあえず相互関連性の検討を終えたものの(相互関連性の検討自体は25年度の研究として計画)、予想したような明確な結果が出ていないため、量的分析を再度試みたいと考えているためである。そもそも「関連性がない」という結論もありうるのだが、ソーシャル・キャピタル自体は多様な指標が考えられるものであり、今回用いたもの以外にも様々な指標を用いて分析を進める余地はある。 また、ジェンダー関連の政策を議会だよりや議事録をもとに抽出し、整理しておく予定であったが、この点については資料収集が不十分である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、24年度のデータ解析において明瞭な結果が出ていないので、代替となるデータを収集し、量的な分析を再度試みる。また、議会だよりや議事録をもとに、市町村におけるジェンダー関連政策がどのように策定されてきたかを整理したい。すべての市町村を対象に資料収集することは困難であるので、女性の政治参画のパターンから、幾つかの市町村に絞り、そこを重点的に精査していきたい。 さらに25年度の研究計画として掲げている質的研究に着手したい。ソーシャル・キャピタルが相対的に豊かな地域と乏しい地域を選定し(横浜市、大磯町、南足柄市などを予定している)、各地域において立場の異なる政治家、行政関係者、活動する女性市民などを対象にヒアリング調査を行い、地域のソーシャル・キャピタルが女性の政治参画やジェンダー政策の策定にどのように関わっているのかを明らかにしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度は、データ収集や資料整理を手伝ってくれる研究補助者を確保することが難しく、十分な時間をとることができなかったので、25年度に引き続いて行っていきたい。次年度に持ち越した研究費は主に、資料・データの収集と整理にかかる謝金として使用する予定である。また、収集した資料・データは、今後の研究の利便性を高めるために冊子としてまとめたい。 25年度に請求する研究費は、主としてヒアリング調査に用いる予定である。
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