2013 Fiscal Year Research-status Report
戦後ドイツ哲学から出発する公共性の歴史的構造的研究
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24520001
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
後藤 嘉也 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (50153771)
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Keywords | 公共性 / 過去の克服 / 戦後ドイツ哲学 / 現代フランス思想 |
Research Abstract |
まず、ハイデガー、ヤスパース、フランクフルト学派第一世代の哲学を過去の克服という課題との取り組みと公共性の問題関心という視点から浮き彫りにした。すなわち、せんとと平和を貫く技術の本質を追究するハイデガーの総駆り立て体制(Ge-stell)、人道に反する罪を解明するヤスパースのコミュニケーション(交わり)への意志としての理性、アウシュヴィッツ以後の哲学を模索するアドルノの自他の非同一性という考え方は、いまなお現在している過去と対峙し公共性に向き合うそれぞれの仕方であることを明らかにした。 次に、上の世代を批判的に摂取しつつ、過去の克服を目指しながら展開されるアーレント(『人間の条件』『精神の生活』『責任と判断」等)や、公共性の哲学とコミュニケーション的行為の理論にいたるハーバーマス哲学(『コミュニケーション的行為の理論』『近代の哲学的ディスクルス』他)を、あるべき公共性ないし来るべき公共性を描くという視点から対比し、一見するに古代ギリシャを範型としつつ近代民主主義に懐疑的な前者と、近代の未完のプロジェクトを継承しようとする後者の共通性と差異を描き出した。 戦後ドイツ哲学の展開を「過去の克服と公共性」という視点から追跡した昨年度および今年度の諸研究を、公共性の思考における統一性と複数性のアポリアという観点から集約した。これは、次年度に遂行する予定の、現代フランス思想における共同体の問題系の追究を視野に入れて行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
戦後ドイツ哲学の展開を「過去の克服と公共性」という視点から追跡するという研究の目的を達成できたから。
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Strategy for Future Research Activity |
現代フランス思想における共同体の問題系を公共性の思考にむけて整理したうえで、これまでの研究を総括して、歴史的研究に裏打ちされた公共性の思考を共時的に行い、公共性は分割(自他のずれ)を要件とするがゆえに全体性ないし合一から明確に区別される次第を腑分けするというのが当初の計画であった。この計画通り研究を遂行したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
端数が余ったものである。 物品費に充当する。
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Research Products
(1 results)