2014 Fiscal Year Research-status Report
表象媒体の哲学的研究―画像の像性と媒体性の分析を中心に―
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24520005
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
小熊 正久 山形大学, 人文学部, 教授 (30133911)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清塚 邦彦 山形大学, 人文学部, 教授 (40292396)
田口 茂 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (50287950)
山田 圭一 千葉大学, 文学研究科, 准教授 (30535828)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 画像 / 知覚 / 表象 / 表象媒体 / 絵画 / 想像 / 中立性変様 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度は、以下のように、研究代表者および分担者のこれまでの研究が結実してきた。 小熊は、フッサールの「中立性変様」―対象の措定を停止する働き―という観点から、「想像」、「画像表象」について考察し、成果をまとめる論文集のなかの論文にまとめる作業をおこなった。また、知覚とその媒体について、フッサールの時間意識分析の観点から研究し、2015年1月の研究会で報告した。田口は、像経験を知覚と空想と比較しながら検討し、上記研究会において発表「知覚と空想の間―媒介現象としての像経験」をおこない、その成果をふまえて、画像知覚における経験を「受動的経験」ととらえた。小熊の研究と相まって、「画像表象」の本質を解明しつつある。清塚は、フィクション概念を哲学的論議の中で代表的な見解の一つとされるカリーの言語行為論的な理論について踏み込んだ検討を行い、その成果を論文「フィクションの言語行為」において発表した。後半期においては、主に画像表象の問題に焦点を置きつつ、存在論的、認識論的な検討を行った。とりわけ、画像表象に目を向けた場合にそこに見える内容(知覚内容)と、絵に描かれていると見なされる内容(表象内容)との間の関係についてやや踏み込んだ検討を行った。 山田は、研究計画通りにウィトゲンシュタインの「アヒル・ウサギのアスペクト転換」の問題を追究し、他の種類のアスペクト転換の事例と比較しつつ、その特徴を概念の働きとからめて考察し、成果は研究会で報告された。 以上のように、画像表象とその媒体について、想像や知覚との関連及び差異を考慮しつつ「画像表象」の特徴と本質を明らかにするという研究は着実に成果をあげつつある。それは、各自の研究と研究会における発表、討論によるものである。それは、2015年度中に研究論集として発行予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「画像表象」とその媒体に関して、現象学的アプローチにより、「中立性変様」と受動的経験としての「画像知覚」という二側面から、その本質が明らかになりつつある(小熊、田口の研究による)。絵画については、清塚により。知覚内容と絵画に描かれた内容のギャップという観点からも考察がすすめられている。知覚については、知覚と概念の関連が、山田によって考察されている。さらに時間的観点からの知覚の考察が小熊によってなされた。 以上より、最終的成果報告(書籍)の刊行が2015年度を待つことになったが、目標はおおむね順調に達成されつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
論文集の編集・刊行に向かって作業をすすめる。代表者および分担者の論文名は以下のとおりである。 小熊正久:「画像表象と中立性変様―フッサールにそくして―」、「時間を介しての感覚と意味―フッサール知覚論の動向―」 田口茂:「受動的経験としての像経験―フッサールから出発して」 清塚邦彦:「絵の中に見えるもの――見えるものと描かれたもの」 山田圭一:「アスペクト転換において変化するもの―ウィトゲンシュタインの二つのアスペクト分析を通じて―」 そのほか、本研究会においてなされた提題を討論をふまえてまとめらたものも収められ、合わせて十数本の論文集となる予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年度前半に研究会(シンポジウム形式)を予定していたが、参加者のやむをえない事情で開催が遅れ、平成27年度1月に開催された。そのため、それをもとにして刊行を予定していた報告書(論文集)の刊行がなされず、そのための予算使用がなされなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度6月には成果報告(論文集)の編集を終え、少なくとも今年度中には、成果報告としての論文集を刊行したい。なお、現在、題名は『画像と知覚の哲学』として12本の論文が掲載される予定である。
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Research Products
(14 results)