2013 Fiscal Year Research-status Report
社会的合意形成における情報管理の倫理的価値構造に関する研究
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24520008
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
桑子 敏雄 東京工業大学, 社会理工学研究科, 教授 (30134422)
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Keywords | 倫理的価値構造 / 意思決定 / 情報管理 / 正義 / 幸福 / 合意形成 |
Research Abstract |
本研究「社会的合意形成における情報管理の倫理的価値構造に関する研究」は、社会的合意形成に関する理論的研究と具体的な社会実践での経験的知見を統合する研究である。情報管理の倫理についての一般理論の構築とともに、多様な社会基盤整備事業や東日本大震災後の復興事業に応用する際の情報管理の具体的な方法についての応用的研究も含む。 平成25年度は、平成24年度の研究体制から得られた知見をもとに、「情報管理」の倫理価値の基本構造の解明およびその理論構築に向けた作業を進めた。その過程で、『日本のコモンズ思想』および 『現代文明の危機と克服』に収録された論文において社会的合意形成の実践的研究成果を論じた。また、単著『生命と風景の哲学』では、社会的合意形成において論じるべき正義の概念と幸福の概念について「実行可能な正義」および「実現可能な幸福」の概念を提示した。本書においては、福島での原子力災害の含む問題について論じたが、災害対応の社会的合意形成の視点は日本学術会議での講演「災害と環境思想」(『学術の動向, Vol. 18, No. 12』)で論じた。 本研究の第2年度である平成25年度は最終年度に向けた理論構築の準備を進める段階であり、この段階で情報管理の倫理を含む「実現可能な幸福」と「実行可能な正義」の概念を提示しえたことは、ともすれば抽象的な議論に陥りがちな現代正義論および現代幸福論に対し、社会的実践をも視野においた理論構築を可能にするものである。本視点は、最終年度における両概念の理論化への基礎をなすものであり、本年度は当初の予定どおり研究を進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、「社会的合意形成における情報管理の倫理的価値構造に関する研究」と題し、現代社会の緊急のテーマである「社会的合意形成」に含まれるべき倫理的価値の構造を解明することを目的とし、社会的合意形成プロセスの構築過程での「透明性の実現」や「説明責任の確保」など、情報管理における「公正さ」や「公平性」といった「正義」に関する倫理を問うことに重点を置いている。 本年度の研究において社会的合意形成の実現のための倫理的価値構造における「実現可能な幸福」および「実行可能な正義」の概念を示し、この概念をもちいた倫理的価値構造の理論構築にむけた方向に研究を進めることができたこと、さらにこの考え方の基本的な部分を単著『生命と風景の哲学』(岩波書店)で示し得たことで、当初の計画以上に進展しているものと考えることができる。この両概念は、3・11以降の日本の社会状況においてもっとも重要なものとして位置づけることができた。 本研究の最終年度に当たる平成26年度には、本研究での成果である「実現可能な幸福」および「実行可能な正義」の概念についてさらに考察を深め、この両概念と情報倫理の重要な要素である「透明性」や「説明責任」との関係を明確にし、理論的な体系化に進むことをめざす。 平成25年度に出版した『生命と風景の哲学』に対する社会的反響を本研究の成果に反映させることも本年度の重要な要素である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、平成24年度と平成25年度の研究成果をとりまとめる。 ①「社会的合意形成における情報管理」の倫理価値構造理論の構築に向けて理論化の作業を進め、研究のとりまとめを行う。 ②理論化した内容を確かなものにするために、ひきつづき社会的合意形成の当事者へのヒアリングを実施し、資料収集・整理を行う。(旅費、謝金) ③研究のとりまとめに必要な出版物、書籍その他資料の収集に当たるとともに、データを収集し、整理入力する作業を行う。(資料整理謝金) ④ 理論化を完成するために、内外の研究者との交流を行い、研究成果に対する批判的検討を依頼する。(旅費、謝金) ⑤平成25年度までの研究成果に対する社会的レスポンスを考慮しながら、「実現可能な幸福」と「実行可能な正義」、およびこれを実現するための社会的合意形成のための情報マネジメントについての考察を進める。 ⑥研究成果の公刊のための準備を行う。また、研究成果を逐次発表する。(旅費、会議費)
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
社会的合意形成の現場での情報管理についての現地調査・ヒアリングについて、現地の状況及び関係者との調整の都合により、26年度の実施としたものがあったため。 研究のフィールドである佐渡市・佐賀市・島根県その他の地域への現地調査・ヒアリングの旅費として使用予定である。
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[Book] 日本のコモンズ思想2014
Author(s)
 桑子敏雄, 秋道智彌, 野本寛一, 田口洋美, 湯本貴和, 家中茂, 楜澤能生, 井原今朝男, 佐野静代, 伊藤康宏, 佐藤仁, 佐藤哲, 牧野光琢
Total Pages
230-248
Publisher
岩波書店
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