2014 Fiscal Year Research-status Report
社会的合意形成における情報管理の倫理的価値構造に関する研究
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24520008
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
桑子 敏雄 東京工業大学, 社会理工学研究科, 教授 (30134422)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 倫理的価値構造 / 意思決定 / 情報管理 / 正義 / 幸福 / 合意形成 / マネジメント |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、「社会的合意形成における情報管理」の倫理的価値構造理論の構築に向けて理論化の作業を進め、研究のとりまとめを行った。とくに、本研究の過程で着想を得た「実現可能な幸福」の概念と「実行可能な正義」についての理論的な整理を行った。 人々の間の対立・紛争を解決するための社会的合意形成では、そのプロセスのデザインとマネジメントをどのように行うかということが重要な課題であるが、その過程において情報の取り扱いはその倫理的価値構造において核心的な意義をもっている。本研究では、プロセスのデザインとマネジメントの適切さが重要であり、このデザインとマネジメントにおいて実現されるべきものとしての「実行可能な正義」と「実現可能な幸福」の概念を深めることができた。 以上の成果については、平成27年3月31日に開催された韓国ソウルの梨花女子大学でのMeridian180による国際会議で提案した。なお、この内容については、関係の国際会議で発表するとともに、成果をまとめた小冊子を関係研究者に配布し、また現在執筆中の著書のなかに組み込むなど社会発信に努める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「実行可能な正義」および「実現可能な幸福」の両概念は、社会的合意形成の目標を設定するものであり、この両概念を架橋するものとして「情報」が位置している。すなわち、社会的合意形成における情報マネジメントでは、合意形成のコーディネータのめざすべき価値として、ステークホルダー間の情報共有を「実行可能な正義と実現可能な幸福」とし、これを実現すべき理念とすべきである。 本研究では、「社会的合意形成における情報管理」に関して、社会的な正義の概念を理解するうえで、人々の選択の公平性・公正性を保証するための「情報の共有」が重要であること、とくに自然災害と人災リスクの緊急時においては、この正義の概念が重要であることを明らかにした。この点で、従来議論されていなかった観点からの情報と正義の概念について社会的合意形成プロセスとの関係を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
「実行可能な正義」と「実現可能な幸福」の概念についての研究成果を今年度開催のいくつかの研究集会で発表するとともに、現在執筆中の『社会的合意形成のプロジェクト・マネジメント』(コロナ社から刊行予定)に組み込む予定である。また、繰り越した研究資金は、本研究の成果を社会的に発信するための冊子の作成に使用する。
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Causes of Carryover |
本年度はこれまでの研究成果を取りまとめ理論化を行う段階にあたり、社会的合意形成のための情報マネジメント理論の社会発信のために小冊子を作製する予定であったが、3月に行った国際ワークショップの成果も盛り込むことが望ましいとの考えから、その作成時期を遅らることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究成果発信のための成果とりまとめ、小冊子作成・印刷費用に充てる。
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Research Products
(3 results)
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[Book] 現代文明の危機と克服2014
Author(s)
木村武史,カール・ベッカー,桑子敏雄,原口弥生,櫻井次郎,柏木志保,宮本万里,箕輪真理,松井健一
Total Pages
235
Publisher
日本地域社会研究所