2013 Fiscal Year Research-status Report
言語における「相互主観性」に関する現象学的、認知言語学的研究
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24520011
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮原 勇 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (90182039)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮浦 國江 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (50275111)
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Keywords | 現象学 / 主観性 / 主観化 / 相互主観性 / 認知言語学 / 社会的現実 |
Research Abstract |
まず第I段階として認知言語学者R.W.Langackerによる言語現象の中での主観性、ないしは主観化のプロセスの理論を、現象学的視点から考察した。これは昨年からの考察に続くものであるが、本年度はその分析を空間の中における物体の指示というGroundingの現象として考察し、しかもそのような知覚的空間的方向付けと言語表現との間の相関関係を英語と日本語での相違を考察した。そのことから主観的世界描像の言語的表出が各言語体によって相違しているが、その相違が何に基づくかを相互主観的関係から説明した。そして、Langackerによる二次元的イメージスキーマを新たに三次元的イメージスキーマによって説明し、主観性の次元は、現実の物理的空間関係を象徴しているLnagaclerの二次元的図式を上から俯瞰している縦方向の次元として描かれることを示した。そして、そのような個人的主観性の世界描像に対してどのように対人関係という相互主観的次元が成立するかを現象学的に考察するとともに、言語現象における主観的表現がいかにして慣習化され社交的クリシェになるかを考察した。まず、相互主観性の成立に関しては、現象学者Husserlの理論を分析哲学者John Searleの理論、つまり社会的実在の構成の理論とを比較しながら考察した。そして、Husserlの相互主観性の理論によれば、複数主観の間に成立するそのような相互主観性とは、言語コミュニケーションにおいての視点の交換を可能にする基盤であることを示した。つまり、言語コミュニケーションにおいて行われる事物指示や空間的方向性の描写が成立する基盤として、そのような相互主観的意識の成立が前提されていることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
認知言語学の方面での研究はほぼ完成している。 現象学の方面での研究は、Husserlの文献では基本的なものは検討したが、まだ草稿類の検討場残されている。この点は次年度に遂行されれば当初の計画は完成すると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
空間認識とdeixisの関連を認知言語学的手法でさらに検討する必要が出てきた。そして、その結果を現象学的手法によって分析するとともに、Langackerのイメージスキーマの手法によって図解し、解明する必要がある。また、Michael Tomaselloのjoint attentionの理論を検討する必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最終的な使用額の確認が遅くなり研究会出席の旅費請求が出来なかった。 京都大学で開催される認知言語学研究会の出席のための必要として使用する計画である。
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