2012 Fiscal Year Research-status Report
シラー、シェリング、ニーチェの自由論 ―スピノザ受容を軸として―
Project/Area Number |
24520030
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
長倉 誠一 武蔵大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (60590015)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | シラー / シェリング / ニーチェ / 自由論 / スピノザ / 自然 / 生命 |
Research Abstract |
真の「自由」についての私見を、『武蔵大学総合研究所紀要』に発表した。現代日本語の「おのずから」「みずからの」語義を、九鬼周造などの所論から明確化し、真の「自由」とは、両者の統一から捉えられうるものであると提唱した。その観点から、有名なI.バーリンならびにバンジャマン・コンスタンによる「自由」論の根本的な欠陥を指摘し、さらに真の「自由」が、シラーの発言などに認められることをテキストに即して明らかにした。「おのずから」と「みずから」との統一から真の「自由」を捉えうるという私見の提示は、シラーなどの〈本性(自然)からの必然性としての自由〉を掘り起こす研究全体の重要性を、間接的に証明するものである。 現代のもっとも重要なシェリング研究者であるエーアハルトの解釈を検討し、『武蔵大学人文学会雑誌』に発表した。エーアハルトは、従来、思想の変遷・移り変わりとして捉えられてきたシェリング解釈を退け、前期から後期に至る一貫性を説き、またシェリングの探求課題が「自由」に向けられていたと見ている。また、シェリングとスピノザとの関係については、まったく相互に異質なものと見る。こうした彼のシェリング解釈の問題点を指摘しつつも、たしかに初期からの一貫した思想の枠組みが認められることを拙論は示した。この拙論により、シェリング哲学研究において、今後踏まえるべき基本的な姿勢と、さらに厳密化すべき検討課題を確認できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料調査や発表も含め、当初の計画に近い状況にあり、おおむね順調であると考えているため。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度にW. E. エーアハルトのシェリング解釈を検討したが、その際に、さらに補足が必要と自覚した諸点、とくにシェリング後期哲学に属するミュンヘン講義を精読し、シェリング後期思想について自分の見解を確かなものとすること。これが今年度の課題の一つである。 もう一つの今年度の課題は、シェリングとニーチェとの関係について、ニーチェの「意志」概念、とくに「自由」としての「力への意志」を中心とする論文を起草することである。そこで、年度の初頭の現在、二次文献を収集しているところである。シェリング思想とニーチェ思想を比較した論文は、カール・レーヴィットやJ. E. ウィルソンなどいくつか存在するので、それらの検討から始めている。ただ、シェリングとニーチェの関係について扱う際に是非とも目を通しておくべきだと考えていた『ショーペンハウアーのシェリング読解』(fromann-hplzboog)が当初の2012年刊行予定から、2014年上半期へと大幅に延期されたのは大きな痛手であった。これはどうしようもない事態なので、出版を待って他日内容を補足するほかない。いずれにせよ、ニーチェ研究の場合には、文献もきわめて多く、またニーチェ自身のすべての遺稿まで含めようとすると収拾がつかなくなるので、目下のところ、ミュラー=ラオターによるニーチェ研究を踏み台にしようと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度に引き続き本研究に関連する資料購入や発表に必要な旅費として使用する予定である。
|
Research Products
(2 results)