2013 Fiscal Year Research-status Report
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24520039
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
多田 伊織 (永瀬 伊織) 京都大学, 人文科学研究所, 教務補佐員 (30310783)
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Keywords | 国際研究者交流 / 台湾 / 中国 / 中国医学 / 輯佚 / 医心方 / 江戸医学館 / 仏教医学 |
Research Abstract |
平成25年度は、仏教医学の中国での受容および関連分野について、前年度学会・シンポジウムで行った口頭発表を論文とし、公刊する作業を中心に進めた。 調査は、国内では金沢文庫等で文献調査、東博・奈良博等で参考となる展示を参観、資料を収集した。海外では、平成26年2月16日より3月1日まで、永塚憲治氏の協力を得、台湾の中央研究院・故宮博物院図書文献館・国家図書館で文献調査を行い、展示を参観、資料を収集した。特に、2月19日に、中央研究院開催の記者会見に参加、研究者と交流を行った。国際学会は、第1回EAJS日本会議Preconferenceに参加した。 平成25年度に参加、あるいは学術発表を行った学会・研究会を以下に列挙する。 平成25.5.10-12 日本医史学会第114回総会・学術大会(日本歯科大学生命歯学部)口頭発表/7.20 白幡洋三郎教授共同研究会(国際日本文化研究センター 以下日文研)/7.21 術数学国際ワークショップ2013-7「術数学と宗教文化」(京都大学人文科学研究所分館 以下分館)/9.7 術数学研究会(分館 京都大学人文科学研究所武田時昌教授主催)/9.27 第1回EAJS日本会議Preconference(日文研)/10.5 術数学研究会(京都大学人文科学研究所本館 以下本館)/11.2 術数学研究会(分館)/11.8-9 白幡洋三郎教授共同研究―大名庭園シンポジウム(日文研)/12.7 術数学研究会(分館)/12.14 伊東貴之教授共同研究会(日文研)/12.5 稲賀繁美教授共同研究会(日文研)/平成26.1.11 術数学研究会(分館)/2.1 術数学研究会(本館)/2.15 井上章一教授共同研究会(日文研)/3.28 術数学研究会東京ミーティング(大正大学)/3.29 桃の会(京大附属図書館 小南一郎京都大学名誉教授主催)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 散逸した唐代までの仏教医学文献の輯佚と復元と解析 輯佚作業については若干計画を変更し、東晋・葛洪関連医書の輯佚を行った。輯佚によって唐代医書や『医心方』で『葛氏方』等葛洪原撰の医書とされるものの系統を整理、成果は平成26年度の日本医史学会・日本道教学会等で発表の予定である。 2. 海外流出した幕府の医学館関係者旧蔵の医書を中心とする調査(海外・国内調査) 調査予定だった北京国家図書館は改築中で、調査地域を台湾に変更、北米への旅費を充て、調査期間を2週間に延長し、永塚憲治氏(研医会)の協力を得、2月16日から3月1日まで、2人で江戸医学館からの流出医書を中心に精力的に調査を進めた。中央研究院傅斯年図書館では、坂立節写とされる『黄帝内經太素』鈔本が原本でないことを確認した。従来解明されていなかった事実である。故宮博物院図書文献館では、小島尚質『宋重醫藥表』の翻字を全て終える等、多くの文献学的成果を得た。また小島家旧蔵の宋本『新編翰苑新書』を目睹し得た。国家図書館では、『新刊補注釋文黄帝内經素問』等の原本を調査した。国内では金沢文庫等で個人で調査を行った。成果は、平成26年度日本中国学会等で発表の予定である。 3.海外の研究者との意見交流と海外への情報発信 平成25年度は、北米で行われるAASで発表を予定していたが、昨年度慶應大学で開かれたASHMで行った発表(英語による)等の反応から、文献学的調査を中心とする本研究は、成果の高度な理解および学術的批判を得るには、アジア地域で日本語もしくは中国語で発表する方が効果的であると判断し、計画を変更、26年度に行われるアジア地域での国際的な東洋医学関連学会での発表を準備することとした。国際的な学術交流は、台湾調査時に医学史研究者祝平一氏(中央研究院)を始めとする研究者と意見交流を図り、祝氏および林富士副所長の日本招聘を計画中である。
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Strategy for Future Research Activity |
【研究の進め方】仏教医学の受容については、過去2年間輯佚した唐代医書資料に併せ、更に敦煌の出土文字資料等の解析を進める。これまでの文献調査で明らかになりつつあるのは、六朝までについては、仏教・道教の双方が互いに医学的な知識を共有していることである。これは中国の宗教史上、更に解析されるべき問題を含んでいる。そして、これまでの調査では、まだ断言できないものの、隋代以降の仏教医学受容の態勢は六朝までとは本質的に異なった様相を含んでいる印象を受ける。その点については、文化接触の観点を踏まえた上で、更なる文献解析を進めたい。 【調査について】日本流出の江戸医学館関連医書の調査は、26年度は北京で調査が望ましいが、国家図書館善本室の利用が大前提であるので、工事の進捗状況如何では、国内および台湾の調査を優先する。 【成果の学会発表について】成果の国内学会発表については、以下のように予定している。日本医史学会(九博 5月)・日本宗教学会(同志社大学 9月)・日本中国学会(大谷大学 10月)・日本道教学会(あべのハルカス 11月)・木簡学会(奈良文化財研究所 12月)国際学会での発表については、現在調整中である。 【成果の公開について】幕府医官の小島寶素父子の業績に関する資料の翻刻については、26年度中に整理を行い、科研費助成等による出版を計画している。森鴎外に小編「小嶋寶素」があるため、国内外の鴎外研究者にも望まれている資料集である。文理の垣根を越え、日本語を母語としない研究者にも資する資料集としての編集を期したい。3年間の輯佚と整理で得られた仏教医学文献輯佚データについては、ドラフトの形で研究者に配布し、指正を仰いだ後、書冊体およびデータベースの形で公開、配布する。
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Research Products
(8 results)