2013 Fiscal Year Research-status Report
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24520041
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
鶴成 久章 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (20294845)
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Keywords | 科挙 / 会試 / 郷試 / 四書題 / 五経題 / 論題 / 策題 |
Research Abstract |
今年度は、郷試の第一場(「四書義」「五経義」)、第二場(「論」「詔・誥・表」「判」)の出題内容について分析を行った。主な分析対象は「郷試録」であったが、「四書義」については、『皇明程墨紀年』『歴科四書伝世輝珍程文墨巻』『歴科程墨文室』等、また、「五経義」については、『精選卯辰科尚書程墨文脈』『歴科易経程墨芳潤評林』等、さらに、「論」「詔・誥・表」については、『皇明郷会試二三場程文選』『群書備考・続二三場群書備考』等も利用した。そして、これらの資料に基づいて、前年に実施済みの会試の出題の分析データを参照しながら、会試の南巻(応天府、浙江、江西、福建、湖広、広東)、北巻(順天府、山東、山西、河南、陝西)、中巻(四川、広西、雲南、貴州)の地域区分ごとに、各科の会試の前年に行われた郷試全九十回分の第一場、第二場の出題内容を分析し、郷試の出題が翌年の会試の出題に影響を与えているのか否か、与えているとすればそれはどういう観点であるのかという点について考察した。その結果、郷試の出題の観点が同時期に挙行された会試の出題と相互に連関しあっていることがほぼ明らかになった。しかしながら、その地域(省)の思想史的伝統や思想風土に根ざした地域特有の思想的テーマを意識した出題がどの程度なされていたのかという点については、今のところそれほど明確な特徴を探し切れていない。ただ、この問題は次年度の「策」題の研究によって明らかにできるものと考えている。 今年度の研究成果の一部は、国内外の学会における口頭発表や共著等のかたちで既に発表したほか、出版時期が未確定の投稿済み原稿も三編ある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度も精力的に文献調査を重ねた結果、本研究の完遂に必要な基本資料がほぼ集まった。また、年度当初に立てた研究計画に従って、おおむね予定通りに資料整理と資料分析を遂行することができた。そして、本研究において最も重要な意味をもつ明代の会試と郷試の出題内容の分析とその考察から、明代思想史と科挙制度との関係をめぐる新たな観点からの研究成果が得られた思っている。さらに、本研究の成果をもとにして、将来的に研究の幅を広げ、内容をより発展させていくことにつながる研究の構想も徐々に生まれつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、郷試の第三場において出題された「策」題の分析を中心に研究を行う。「策」は、「経史時務策」という言い方がされることもあるように、伝統的に「経」(経学)、「史」(歴史)、「時務」(時事問題)が問われることが多いが、明代の「策」題においてはこの三分野に加えて太祖洪武帝(朱元璋)、太宗永楽帝(朱棣)の創始した制度や理想的政治、性理学に関する内容が問われることが多かったので、それらにも留意したい。その上で、本研究において特に重視したい観点は、各科の会試の前年に行われた郷試の出題内容が、前の科の会試の出題の影響をどの程度受けているのか、あるいは郷試の出題が翌年の会試の出題とどういう関係にあるのかという点である。また、郷試の策題では、その地域(省)に特有の思想的テーマ(地域の先賢・思想家の存在等)や地方の政治的・軍事的・経済的背景を踏まえた出題がなされることから、その点に関わる考察にはとりわけ注意深く取り組みたい。大まかなタイムスケジュールとして、南巻分の分析を7月末までに、北巻分を11月末までに、中巻分を翌年の1月末までに行う。 また、本年度は研究の最終年度であるので、三年間の研究成果を踏まえ、明代の郷試と会試の「三場題目」について思想史的な観点から総合的な考察を行った上で、まずは個別のテーマごとに数編の論文にまとめ発表する。さらに、来年度末までに総合的な考察を踏まえた論文をまとめ、できるだけ早い時期に学術雑誌・紀要に発表したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外で購入予定であった資料が、書店の事情で予定通り入手できなかったため、「次年度使用額」が生じた。 次年度の研究を遂行する過程で、今年度に未入手の資料を購入する費用として、この「次年度使用額」を使用する計画である。
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Research Products
(4 results)