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2012 Fiscal Year Research-status Report

清朝ムスリム学者劉智『天方性理』における形而上学

Research Project

Project/Area Number 24520045
Research Category

Grant-in-Aid for Scientific Research (C)

Research InstitutionNihon University

Principal Investigator

青木 隆  日本大学, 文理学部, 教授 (20349947)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 仁子 寿晴  京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, その他 (10376519)
黒岩 高  武蔵大学, 人文学部, 教授 (60409365)
矢島 洋一  京都外国語大学, 外国語学部, その他 (60410990)
佐藤 実  大妻女子大学, 比較文化学部, 准教授 (70447671)
Project Period (FY) 2012-04-01 – 2016-03-31
Keywords中国イスラム思想 / 劉智 / 天方性理
Research Abstract

平成24年度は、研究討論会を合計16回行い、延べ144時間にわたり、主に『天方性理』巻三の「概言」・「人生元始図説」・「胚胎初化図説」を対象とし、専攻各方面から徹底的に討議した。その結果、以下のような成果を得た。
ミクロコスモスの生成を取り扱う『天方性理』巻三は、従来その主要な情報源として、伝統的な中国医学文献、耶蘇会文献・マクサド・アクサなどのペルシャ語文献、マワーキフその他のアラビア語文献が想定されており、実際にその通りである。しかし、具体的な医学に関する文献的根拠が明らかになっただけでは、巻三の内容はなかなか理解できず、手をこまねいていた。しかし、当該年度より、四庫全書・道蔵その他のデータベースを駆使することにより、劉智の用いる細かい語彙とその用法が辞書的な一般的意味内容にとどまらず、かなりの程度に宋代から清初期にかけての中国思想が用いていた用法にぴったり一致していることが明らかになってきた。
たとえば、巻三「概言」では、「造物自然の妙」、「天人一致の精」などという語が用いられているが、従来は単なるレトリックであるとしか理解していなかった。こうした語彙が、宋代の思想文献を淵源とし、清初には士大夫の一般的な思想言語にひろく用いられるようになったことを手がかりに巻三の本文分析を行ったところ、以下のような結果を得た。
「造物」は辞書的には造物主の意であるが、ここでは被造物を指し、「自然」とは生生やむ事のない天地の万物を生み育てるあり方を指し、「妙」とはその万物を生み育てるはたらきの無限さを指す。「天人一致」も、とくに劉智の独自の用法でなくて、近世の中国思想でいう「天人一致」と同じく、天地万物と聖人が一体となっている状態を指し、巻三に置き換えていえば、巻三・継性顕著にいう「公共の継性」と「我の継性」の区別がつかなくなる状態を指すことが明らかになった。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

4: Progress in research has been delayed.

Reason

平成24年度は、劉智『天方性理』巻三の後半を会読し、訳注を作成する予定であった。前年度までにわれわれは、巻三・前半の会読を終えていたが、訳注完成に至らなかった。
われわれの見込みでは、主に医学知識の文献的根拠を解明すれば、じゅうぶん巻三前半の訳注は完成するはずであった。しかし、実際に会読を進め、関係各方面との討議を行ってみたところ、まだじゅうぶん本文を理解する状態でないことが明白になった。問題は、劉智の医学知識の文献的根拠を探索するだけにとどまらず、劉智の思想言語そのものを清初思想の水準で読み直すことが課題として急浮上したのである。清初の中国思想の言語世界の中に劉智のそれを置いて読み直すには、劉智の思想言語の語彙用法を一つ一つ清初の中国の思想言語のそれとていねいにつきあわせて比較しなければならない。こうした非常に手間ひまのかかる作業が必要になったのはまったくの予想外であった。劉智のテキストがオーソドックスな古典漢文で書かれている以上、ある意味でこれは当たり前の手続き出るともいえるかもしれないが、これほどにまで清初の中国思想であることを意識することが必要であるとは誰にも予想がつかなかったのである。
したがって、平成24年度も引き続き巻三の前半を会読しつつ、三たび専門家による徹底討議に付さざるを得ず、巻三後半の会読を開始できなかった。これが研究の達成度の遅れている原因である。

Strategy for Future Research Activity

中国イスラム思想の研究の蓄積はまだ浅く、研究方法も確立されておらず手探り状態である。専攻各方面から討議しているが、なかなか決定的な証拠に乏しく、妥当な結論を見出すことがきわめて難しい。
従来より、劉智のテクストを中国伝統思想、耶蘇会文献、西方イスラーム文献との比較を行いながら会読をすすめてきたが、平成24年度より中国伝統思想文献については、朱熹や王守仁といったビッグネームの思想文献だけでなく、宋代から清初までの一般的な各種思想文献にまで量的に比較対象を広げ、かつまた特殊な難解なターム(たとえば医学や性理学で用いられるような)だけでなく、一般的な思想言語の語彙の用法にまで(たとえば天や人)質的に比較の対象を広げることになった。平成24年度の経験から、このような比較対照するテキストの範囲を拡充することは不可避であると信ずる。
以上述べ来たったような中国近世の思想文献の資料・データベースを拡充するとともに、これまで以上に異なる専門家間の徹底的な討議の時間を確保することに努めたい。平成24年度は、合計16回、延べ144時間にわたる討議を行ったが、本年度は合計20回、延べ180時間の討議時間を確保することで少しでも研究を進めたいと考える。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

次年度は、劉智『天方性理』巻三のうち第3章・四本分著図説から第6章・霊活顕用図説までを会読する予定である。これまで通り、とくに担当者を定めず、全員が現代日本語訳および語釈・内容解説の草稿を討議に提出し、各専攻の立場から徹底的な討議を行う(担当:研究代表者、研究分担者、研究協力者全員)。
共同研究者が関東と関西にまたがっているため、そのつどの討論会の参加者の顔ぶれに応じて関西と関東で開催する。その研究討議を行うための国内旅費を支出する。訳注原稿がある程度たまった段階で適宜成果を印刷刊行する(担当:研究代表者)。そのための印刷刊行費を支出する。以上の二つに加え、さらに中国思想文献の資料・データベースの拡充のための費用に次年度の研究費を使用したい。

  • Research Products

    (5 results)

All 2013 2012

All Journal Article (4 results) (of which Peer Reviewed: 4 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] 経堂語とその周辺――回族が使う言葉――2012

    • Author(s)
      中西竜也
    • Journal Title

      中国のムスリムを知るための60章

      Volume: 明石書店 Pages: pp.66-70

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] 経堂教育――清真寺におけるイスラーム教育――2012

    • Author(s)
      中西竜也
    • Journal Title

      中国のムスリムを知るための60章

      Volume: 明石書店 Pages: pp157-161

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] 中国イスラームの経典――中国に流布したアラビア語・ペルシア語文献――2012

    • Author(s)
      中西竜也
    • Journal Title

      中国のムスリムを知るための60章

      Volume: 明石書店 Pages: pp162-167

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] 回儒—中国イスラームの思想的営為2012

    • Author(s)
      佐藤実
    • Journal Title

      中国のムスリムを知るための60章

      Volume: 明石書店 Pages: pp208-212

    • Peer Reviewed
  • [Book] 中華と対話するイスラーム――17-19世紀中国ムスリムの思想的営為2013

    • Author(s)
      中西竜也
    • Total Pages
      420頁
    • Publisher
      京都大学学術出版会

URL: 

Published: 2014-07-24  

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