2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24520045
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
青木 隆 日本大学, 文理学部, 教授 (20349947)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仁子 寿晴 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, その他 (10376519) [Withdrawn]
黒岩 高 武蔵大学, 人文学部, 教授 (60409365)
矢島 洋一 奈良女子大学, その他部局等, 准教授 (60410990)
佐藤 実 大妻女子大学, 比較文化学部, 准教授 (70447671)
中西 竜也 京都大学, 学内共同利用施設等, 助教 (40636784)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 劉智 / 中国ムスリム思想 / ジャーミー / ラワイフ / 真境昭微 / 朱子学 |
Outline of Annual Research Achievements |
敬虔なムスリムである劉智が自らの思想言語中に用いる朱子学のタームは、伝統的な中国士大夫たちの朱子学のタームの用法と異なっている。今年度は、ムスリムである劉智の四書の読み方にムスリム的な特徴をさぐりながら、、『天方性理』に引用されている四書やそのほかの古典籍の引用の仕方を分析しなおすことを進めた。たとえば、巻4「順逆分支図説」には、「人欲に純にして天理の正しきに合せざるを逆と曰ふ」とあり、この「天理の正しきに合す」は、朱熹『論語集注』述而篇の語である。『論語』のこの箇所は、衛の出公輒に対する孔子の評価を冉有に尋ねられた子貢が、孔子の考えを探るために伯夷叔斉のことを尋ねた箇所である。朱熹は、伯夷叔斉の態度を「天理の正しきに合して人心の安に即する所以を求めた」と評している。『論語集注』のこの箇所は、後世の儒者の注目を浴びた形跡はない。劉智がこの箇所をわざわざ引用するのには、それなりの理由があってのこととかんがえなければならない。長幼の序を重んずる弟の叔斉は、父王から位を譲られたが、兄を差し置いて自分が位につくことはできぬと考え、一方、父子の序を重んずる兄の伯夷は、父から位を譲られたのでないので、自分が位につくことはできぬと考えた。父子の序と長幼の序が矛盾するときに、どうすればよいのかという問題がここに語られている。劉智は、順と逆が錯綜し、何が順であり逆であるのかわからないようなときにどうするべきかをこの図説で考えようとしていることになる。 また、懸案であった、ジャーミー『ラワイフ』ペルシャ語原典と劉智によるその漢訳『真境昭微』との比較検討により、劉智の存在論的タームの意味用法を確定し、『天方性理』訳注に反映させる作業もようやく少しずつ進んできている。
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